第34話 目指せ、ダンジョンのコア
アレーナの案内により無事入ることが出来た。
ここがあの場所、男のロマンである——————。
「ダンジョンだ——————!!」
やっべぇ恥ずかしい。
嬉しすぎたあまり本能のまま叫んじまった。
「喜んでくれたみたいでよかった。じゃあゆっくり回ろうね?」
「足元に気を付けてね?」と注意と一緒に腕組みを解き恋人繋ぎで手と手が繋がった。
「っ………」
顔が少しずつ熱くなっていくのが分かる。
「顔赤いよ? もしかしてテレてるの~?」
がっつり繋がれた指をニギニギと動かしてアレーナがからかってくる。
「………初めてだっつーの、悪いかよ」
「へ、へえーこの繋ぎ方、初めてなんだ。フェリナとデートした時してなかったの?」
「腕組みされて歩き回ったりしたけど手は繋いでなかったぞ」
語気を敢えて強くしてるが段々声が小さくなってくのが自分でわかる。
こっちに飛ばされる前までは見た目のせいでほぼ女の子扱いされてて恋人繋ぎする機会なんか一度もなかった。
まさに生まれて初めての経験。
それにフェリナとデートした時なんて自我はあるがすぐ元のNPCのように戻るって思っていたため、そこまで考えが及ばなかった。
それ以上の行為まで進んだくせに恋人繋ぎごときでしゃぎ倒す主人公たちよ、今まで叩いたりしてごめんな。
「ほ、本当に初めてなんだ………そか、僕が貰っちゃったんだ」
『リオの初めて貰っちゃったよ、どうしよ——————彼に僕の色で染めちゃったってことでいいよね、そうだよね? それなら責任もって僕がせ——————』
「い、いっくぞ! ついてこい」
「あ、ちょっと!」
思考の盗聴まで見せつけて来やがってアレーナのやつ。
続きの言葉は予想は付かないけど身の危険を感じたので繋いだままの手を引っ張って歩き出すことで誤魔化す。
数歩歩き出した先にアレーナに引っ張られて強制的に足並みが揃われる。
「置いて行っちゃ嫌だよ? デートは一緒に過ごすのが基本なの」
「わかった。じゃあゆっくり歩くか」
「うんっ」
元気いっぱいの返事がアレーナから返ってきた。
そのまま歩幅合わせてダンジョンの攻略ではなく観光を始めることに。
いかにもダンジョンって感じに敷かれた道にところところ空いている穴の数々が目の前に広がっていた。
戦闘の痕のようなものはまったく見当たらない。
アレーナの言う通り観光デートには割と合ってるかも?
「ここ見たことあるの?」
画面越しで見たことあるのかって言いたいのか?
『それ、それが聞きたかったの』
思考の盗聴で同意の旨が飛んできた。
こういう知らない物への補足が用途として正しいんだろうけどなんか違和感が感じられる。
オレも毒されていたりするのかー。
「ここはないな。なんか開けたところは見たことあるぞ」
『カノ檻』ではダンジョンに当たるCGは一枚しか用意されていない。
ダンジョンは異世界物なら必ず名が上がるセオリーになりつつあるがこれは悪役令嬢ゲームだ。
イケメンといちゃつくのがメインでダンジョンというゴリゴリの異世界要素は不要と判断したんだろう。
「リオが見てた風景? CG? とにかく何があったのか、教えてもらえるかな」
「えと、真ん中にでっかい紋様が刻まれた床があって、いくつかの柱が乱雑に置かれてたな」
他にもあるかもしれないけど印象に強く残されているのはこの辺りだ。
記憶の中にあるモノだけをかいつまんで伝える。
「たぶんダンジョンのコアかな。このまままっすぐ進めればもうすぐ着くかな」
「ゆっくり行こうぜ。一本道しかないからゆっくりもなにもないけど」
「くすっ、うん! じゃあ腕に抱きついていいかな?」
同意を求めるような口ぶり。
アレーナが反対の手でそっと腕に巻き付けてきた。
「こうすればリオと初めてのコイビトツナギ? も出来るし、近くに感じることもできるね♪」
「前見て歩け前を。オレにアブナイことさせないって散々言ってるのはアレーナ、お前だぞ?」
「僕は強いからいいよー? リオから離れてアブナイことになった方がもっといやだもん」
『こうしてしっかりマーキング付けとかないとこの前みたいに離れちゃうかも………しっかり留めておかないと、ね』
仄暗い感情が思考の盗聴で伝わってきた。
特に変わり映えしない一本道だが例の脱走で不安にさせたのは確かだな。
「もう逃げ出したりしないからさ、今日は楽しもうぜ」
デートが楽しみに思う気持ち半分、この前の謝罪の気持ち半分を繋がった己の手に込める。
アレーナのオレを想う気持ちに寄り添うように。
「うん! 今日はよろしくね、リオ!」
ダンジョンのコアを目指して再び歩き出すオレ達だった。
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