第36話 激突 柊 奏VS冴島 唯 ⑦
PM1時…
《これから、新入生歓迎『新緑祭』を始めます。お手元にある引き換え券を忘れずに持ち、楽しい新緑祭にしてください》
アナウンスが流れた。
それすなわち、俺たち図書委員の戦いも始まるということ。
俺と柿島先輩は列整備を終えると、イベント会場でえる図書室内に戻ってきていた。
担当としては俺、柿島先輩は男と言うことで材料調達に、列整備、食べ終わった皿の片付けといわば雑用係。水原先輩と花梨には簡易的なキッチンに入ってもらって喫茶店ならではの料理づくり。
そして…
「泣く前に何か言い残すことはない?」
「どちらがですか?あなたの泣き喚く姿が目に浮かぶようですよ」
この二人はメインスタッフ。学生であるお客さんに対しての料理運び。とりあえず平和的に仕事をこなしてくれればいい。
集計の仕方だが、簡易的な感じではあるが、図書室の外に引き換え券を置く場所『柊 奏』『冴島 唯』の別々の箱を用意した。
一応、見れる人が監視をしとくというシステムにはしているが、人手不足というところがあるため、見れないことが多くなる可能性が高い。だが、この学校には素直にこの二人の結果を知りたいという人間が多いはず。イタズラは少ないと読んだ。
「いいですか…開けますよ」
俺の言葉に全員が頷いた。
「それじゃあ、行きます!」
そして俺たちの新緑祭が今…始まる。
※ ※ ※
火蓋は切っておとされた。
図書室の前にはよくニュースで見られるような長蛇の列。もちろんこの列の1番の目的は。
「は〜い、ちょっと遅いけど、入学おめでとー!おいしくな〜れ、萌え萌え、キュン!!」
定番オムライスに可愛いハートマークをつけていく柊。
「おぉーーーー!!」
「こら、そっちばっか集中しないでくださいね!そんな悪い子には、「めっ!」ですよ」
正義なんてどこへやら…隣に座る生徒に寄り添う形で誘惑していく冴島さん。
「はいーーー!」
ものすごい盛り上がりだ。
そう…本当に予想以上のものすごい盛り上がりではあるのだが…
…どこでそんな言葉遣いを覚えてきたんだ…
学生たちの食後の掃除をしながら見届けているが、ものすごいメイドというものへの適応力。この二人はこの一週間で一体何をしてきたんだ…もはや、メイドの経験をしてきたかのような…そんな二人の対応力だ。
「ゆーくん!!、何ぼーっとしてるの!?お客さんいっぱいなんだからちゃんと仕事してよ!!」
「あ、はいっ!!」
キッチン内から花梨に怒られてしまった。今、図書室は二人の影響でてんやわんや状態。お金があったらいくら儲かるものやら…そんなことを思ってしまうくらいの大盛況中…休んでる暇などない。
図書室内は入っては出て、入っては出ての繰り返し…一体いつ、俺たちに暇が訪れてくれることやら。
「ほら、ほら、もうお腹いっぱい?それじゃあ、お姉さんが応援しちゃうぞ!がんばれー、おー!!」
「あらあら、私に夢中になっちゃいましたか?ふふっ、でもダーメ…私はそんなに軽くありませんよ」
二人の誘惑タイムは止まるところを知らない。なんという引き出しの数。ほんとにどこから引き出してきてるんだ。
「すいませ〜ん!俺の頼んだ『オムライス奏スペシャル』が来ないんですけど〜」
突如、男子学生からのクレームが入った。あまり俺も気にしてなかったことも悪いが、そんなにメニューが来てなかったのか?とはいえ、キッチンに立つのはアシスタントの花梨を含め、メインの水原先輩のみ…絶対に大変なのは間違いない。
…応援に行くべきか?…
「はい!すいませーん!ただいま確認しまーす!」
とりあえず俺は二人の働くキッチンへと向かった。
「すいません、水原先輩、花梨…奏スペシャルのオムライスが来てないって言う人がいるん…」
ドンッ!!
「…はい……オムライス奏スペシャル…」
遮るように水原先輩は俺の前にオムライスを置いていった。
「じゃあ戻るから…」
シュバババババババ!!
……………。
「あ、相坂君、それって私のオムライス?」
「あ……うん…持ってっちゃって…いいよ…」
「うん!ありがと!…………はーい!お待たせ〜!!も〜、あんまり料理が来ないからって、急かしちゃダメだぞー!」
………………。
…この人もめちゃくちゃ凄い人だったんだな…
この時、俺は柿島先輩に言われた『プロ並』という言葉に初めて納得することができた。
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