第49話 その後
「それじゃあ、勇太君、柚子ちゃん!今日はありがとう!勇太くん、体調早く治して、早く一緒に学校に行こうね!じゃあ……またね」
雨が上がり…柊は来た時とは大違いのハイテンション具合で自宅へと帰っていった。
仮初であれ、俺を彼氏にして何がそこまで嬉しいのだろうか?そこは結局謎のままだ。
「よ〜、兄ちゃん。やったじゃねぇか…たった1日で美人彼女の獲得だぜ〜?おまけに女の大事なとこまで触っちゃって〜…くぅ〜、羨ましいぜ、このこの〜!」
「うるせぇ!!バカ妹っ!!元はと言えばお前が!」
「いてててててて!!ギブギブギブ…」
俺は煽るように肘で突いてくる柚子に、おしおきの頬引っ張りをかました。
「はぁぁ…」
※ ※ ※
あの後…俺は柊から、自身の持つ悩みを打ち明けられた。
悩みとは言っても、それは俺も予想していたもの…つまりは『告白』である。今まで、学校の生徒…それ以外にも外部からの告白。それを頑なに断ってきたという柊なのだが、そんな柊にもだんだんと告白を断ることに抵抗が出てきた…ということらしい。なんとも贅沢な理由…柊を気に食わなく思う人からすれば、叩かれること間違いなしの悩みである。
もちろんそんな悩みを長々と聞いてはみたものの、俺に拒否権なんてものはない。どんなことがあれ、俺はこれから柊の彼氏を演じなければならないのだ。確かにあんな美人さんが彼女なら…
そう思う時期も確かにあった。確かにそうは思うのだが…
…いや…これ以上はよそう…
俺はどのみちこの現実を受け止めるしかないのだ。
…あぁ…これからどうしよう…
俺の学校生活は今日一日で心配事だらけの学校生活に変貌してしまった。
※ ※ ※
「おーおーすごいねぇ…これが柊先輩が決めたきまり〜?も〜ラブラブカップル間違いなしじゃん」
柚子は見送る俺の隣で1枚の紙を持ち言った。
『柊条約』
偽のカップル成立が決まり、柊がノリノリで勝手に決めた決まりだ。これからも何かあるたびに増えていくらしいのだが。
そこには…
① お互い下の名前で呼び合うこと
② 登校、下校はなるべく一緒にすること
③ 夜の9時からは必ずスマホを手に取れるようにしておくこと
④ デートは週のどこかで一回はすること
とりあえずはこの4つは守るようにと念を押された。なんとも勝手な…俺の考えなんてお構いなしの柊ファーストな条約である。
「なぁ…柚子。彼女ってのはこんなに縛りが強いもんなのか?」
隣で紙を見る柚子に聞いてみると。
「こんなの序の口だよ!兄ちゃん。女の子ってのは好きな異性を独占したいものなの!人によってはもっと縛る人だっているんだから」
「いや、でも…俺、仮の彼氏だぞ」
………………。
「あの………兄ちゃんってもしかして…相当な鈍感さんで?」
「え?」
俺と柚子の間に少しの沈黙の時間が流れた。
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