第50話 新たな幕開け


「おっはよ!勇太君!体調はもう大丈夫?」


 俺の家と柊の家の通学路での合流地点…とある歩道橋の下で先に待っていた柊が笑みを浮かべ挨拶してきた。


『大丈夫?』


 その言葉を昨日、何回聞かせられたかわからない。柊を見送ってすぐ…俺のスマホにさっそく連絡アプリ『マイン』を使ったメッセージが送られてきた。


 そこには「体調大丈夫?」「無理しないでね」と心配してくれるようなメッセージがズラズラと残されていて、無視するとめんどくさくなることこの上ないため、その後、柊と夜に何回かマインでのやりとりをした。そのため、本人から直接聞いたというわけではないが、何度も心配の声を聞いたような…そんな気持ちに俺はなっている。


「ん?…あぁ、もう体調のほうは大丈夫…かな。柊さんは……相変わらず元気そうだね」


 にこやかな柊を見て率直な感想を柊に言うと。


「か•な•でっ!」


「へ?」


 強めに自身の名前をアピールしてきたことに俺の脳内でふと?マークが浮かんだ。


「か•な•でっ!!……昨日ちゃんと決めたでしょ?もー…仮でも彼氏なんだからそこらへんはちゃんとしてよー」


「あ〜………ごめん…」


 …そういうことですか…


 言葉と共に迫ってくる柊に俺は頬を掻きながら目線をそらすように誤った。


「もー……決めたことはちゃんとやらないと!勇太君、リピートアフタミー!か、な、で。オーケー?」


 どうしても言わせたいのか…前屈みに迫ってくる柊…そんな柊に俺は。


「………かなで…」


 ボソッと呟くように柊に答えた。迫る顔に向かってまじまじと言うのはなかなかに恥ずかしいため、開く口も小さくなる。


「えっ!?なにっ!?きこえな〜い?」


 …こいつぅ〜…


 わざとらしく耳を傾けてくる柊のその姿に無性の腹立たしさを覚える。


 そして…


「かな……で」


 恥ずかしいながらも今度は、聞こえるぐらいの声で柊に言った。


 すると…


「う〜ん………もーちょっと、シャキッとしてほしいんだけどなぁ…でも……まぁしょうがないか!今日は初日ってことで許したげる。早く下で呼んでいくの慣れてってね!勇太君」


「ん…あ、あぁ…ごめん」


 まだ柊的には納得いかないようであった。


 …あぁ、どうして朝からこんな目に…


 朝からのなんともな出来事に俺は空を見上げた。


「それじゃあ、行こっか?勇太君」


 こうして…今日、この日から、俺と柊…もとい俺と奏との、仮カップルとしての学校生活が幕を開けていくのであった。




 


 


 


 

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