第51話 昼休み


「へぇ〜。柊さんと勇太が付き合うことになるなんてね〜。世の中ってわからないものだね〜」


 その日の昼休み…俺はいつも一緒に昼飯を食べている瑠花と。


「え〜そうかなぁ、カナカナ先輩とゆーくん…すごいお似合いだと思うけど〜」


 花梨、奏と共に屋上で昼飯を食べながら軽い会話を交わしていた。


「ねぇ、ねぇ!?ちなみにどっちが告白したの!?カナカナ先輩から!?それとも……えー!まさかのゆーくん!?」


 弁当をつつきながら前のめりに迫ってくる花梨。なんとも騒がしい奴…昔から知ってはいるが、成長してもそこは全く変わらない。


 それにしてもだ……


 …告白かぁ…


 正直どう答えるか困った。今の俺の立ち位置は奏への告白対策ということで偽の彼氏。奏から「付き合ってください」とは言われたものの、それはまた理由の違う告白…どう説明すべきだろうか。


「ふふっ!花梨ちゃん…それは〜…ひ•み•つ…だよ!勇太君なのか、はたまた私なのか…そこは二人にとって大事な話だから、いくら花梨ちゃんでも教えられないんだ〜」


 …お〜…


 奏から花梨への100点満点の返しだった。ふと奏をチラッと見ると、こちらにウインクでアイコンタクトしてきている。これぐらいはおちゃのこさいさいなのだろうか…さすがのコミュニケーション能力の高さである。


「え〜、ケチィ…別に教えてくれたっていいじゃん………じゃあさ、じゃあさ!!ゆーくん、カナカナ先輩!!付き合う…ってこれからどうするの!?映画館とか水族館とか行ったりするの!?あっ!!それともそれともー、夜景見ながらキスとかしちゃうかんじ〜!?」


 感情が上がったり、下がったり…下がった感情から180°回転するように前のめりで聞いてくる花梨。どれだけこいつはロマンチックな青春ストーリーを想像しているんだ。


「んなわけあるか、脳天ピンク女子…学生のカップルなんて、飯食って、そこらへんを歩いて………それで…」


 …あれ、歩いたあと…どうするんだ?…


 コミュ力のない俺にはそのあとの選択肢が思いつかなった。


「そうだよ、花梨ちゃん。映画館とか水族館とか…私はお仕事してるからお金に心配はないけど、勇太君が困っちゃうじゃない?せめてカラオケとかショッピングぐらいにしとかないと…」


 笑いながらに答える奏。


 …え?カラオケ?…俺、奏とカラオケに行くの?…


 カラオケなんて全然と言っていいほど行ってない。そんな俺が奏とカラオケ?俺の背中を冷や汗が垂れる。


「え〜、いいな!いいなぁ!!あたしもカラオケ行きた〜い!」


 奏方向に目を輝かせながら、カラオケにものすごい乗り気な花梨。


 そこへ…


「こ〜ら、ダメだよ花梨…ラブラブな二人の邪魔をしちゃ」


「え〜〜〜……………は〜い…ごめんなさ〜い…」


 最後は瑠花がこの場を収めてくれた。

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