第34話 激突 柊 奏VS冴島 唯 ⑤


「で……どうするのよ…」


「すいません、助けてください!!水原先輩、柿島先輩!」


 ため息まじりの水原先輩の言葉に冷静になった。


 さすがに一人で盛り上がってしまった。喫茶店なんてこの人数でできるかなんてわからない。それにこれはバトル…冴島さんと柊に関してはメイドポジションになるため、準備関係には関わらない。


 料理だってどうしたらいいか…


 あとさき考えずに行動してしまった。


「はぁ…………花梨を連れてきなさい、料理はなんとかしてあげる…」


 …え、水原先輩?…


「まぁ…そうだよね。恋は家事、炊事に関してプロレベルみたいなものだもんね。僕も何か手伝うよ」


 …柿島先輩!…


 なんていい先輩たちなんだ。心の底から二人のことをそう思った。


「いいんですか、柿島先輩、水原先輩!?」


「いいも、何も、図書委員の活動だよ。僕はそこの委員長…去年みたいに何もできないよりは全然いい。すごく楽しそうだし」


「喫茶店って言ったの……私だし…」


「ありがとうございます、柿島先輩、水原先輩」


「ねぇ!!」


 後ろから柊の強めの声がした。振り向くと、そこにはむくれっつらの柊の姿。


 …やばい…


 予想はついた。今、許可をとったのは冴島さんに先輩二人…言ってしまえば柊は今の今までのけもの状態になっていたのだ。


「あの……ひい…らぎ…さん」


「相坂君…何か、私に言うことがあるんじゃないかなぁ〜」


 順序を間違えた。まずは冴島さんと柊…柊は図書委員だからと思って、後回しにしてしまった。


「ごめん!!柊さん、それとお願いします!この図書委員の活動に協力してください!」


 俺はこれ以上ないくらい全力で頭を下げた。


 すると…


「……そんなの相坂君に言われたら協力するしかないじゃない…」


「え?」


 小声で全然聞こえなかった。


「しょうがないなぁって言ったの!いいよ、全然やるよ!」


「ありがとう、柊さん」


「でも、これはあくまで、あの女を倒すためなんだから…これから1週間は放課後の活動に参加できないと思うからそこはカバーしてね!」


 柊さんの可愛らしいウインクに俺も「あぁ」と返事を返した。


「それじゃあ、花梨には俺のほうから連絡しとくんで、これから1週間大変だと思いますが、ご協力よろしくお願いします」


 そして、その場は図書委員活動開始と共に解散となった。


 俺としたことが、柄にもないことを言った。人に対して「お願いします」「ありがとうございます」なんてそんな頻繁に使うこともないし、俺の性格的にも声を張るようなことも今まで全然なかった。


 ただ…


 なんとなく、なんとなくだが。


『楽しい』


 そんなふうに思えたような…そんな気がした。


 とはいえ。


 …あれ、なんで喧嘩の仲裁に俺がお願いして回ってるんだ?…


 そんなことを思った今日この頃だった。


 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る