第33話 激突 柊 奏VS冴島 唯 ④
殺伐とした空気感の中、俺は二人の痴話喧嘩を遮った。もちろん二人の視線は俺を向いている。
はっきり言おう…
…こえぇ…
出ていったはいいものの、二人からの「邪魔しないで」という無言の圧に改めて、場違いのことをしてしまったなという後悔の念が凄い。
だが、このままだと全然埒が開かないというのも事実。いつまで続くかわからないこの痴話喧嘩には何かしらで決着をつけなければならない。
「ごめん、二人とも…このままだと君たちの戦いに勝敗がつかない…それは君たちにもわかるだろう?」
「それは……」
「そうかもしれません…」
…おぉ…納得してくれた…
もっと何か言ってくるのかと思ったが、意外にも二人はあっさりと納得してくれた。
「だったら、どうだろう…うちの催し物で決着をつけるってのは」
俺の提案に冴島さんの顔が渋った。
「え?いや、ですから相坂さん…それが決まらないかもしれないからって私たち生徒会が今ここに…」
「それは『かも』の話だろ。だったら今決めた!俺たち図書委員はこの場を使ってマンガ喫茶ならぬ、『図書室喫茶』をやることにする。本を読むもよし、何か食いにくるもよし、なんでもありの図書室喫茶だ!そこで柊さんと冴島さんに正々堂々決着をつけてもらいたい」
「でも相坂君、どうやって勝負を?喫茶店なんでしょ」
俺は待ってましたとばかりに柊に答える。
「それは、柊さんも知ってるはずだよ。新緑祭の時にもらえるもの…あったよね?」
「え?………あっ…引き換え券!」
「そう…この新緑祭にはお金は使えない…でもその代わりに配られるのが引き換え券だ。二人にはこの引き換え券の総枚数で勝負してもらいたい」
「待ってください!!相坂さん」
全ての話が終着しようとした時、何かを察したのか冴島さんが話を止めた。
「引き換え券での勝負ってことは、私たちが何かを喫茶店でしなければならないということ…まさか、メイドか何かで接客しろなんてこと…」
「お、察しがいいね。俺はそれが、1番二人の姿が見れて、1番生徒たちから評価される…決着にはいいと思ったんだけど…」
「却下です!そもそも私は生徒会なんです。そんないかがわしい内容で柊 奏と戦うなんて……そんなことできません!」
顔を赤らめながらに拒否する冴島さんだが。
「ふ〜ん…それじゃあ、柊さんVS冴島さんは冴島さんの負けってことでいいのかなぁ?いやぁ…これは響くと思うなぁ。『冴島唯は柊奏との勝負から逃げた』もうVSなんて言えなくなっちゃうんじゃないかなぁ?」
追い討ちをかけるように言うと。
「むむむむむ。はぁ…わかりました。そこでこの女に勝てば、誰も何も言えない…私が柊奏より上…それの証明ってことでいいんですね」
「あぁ…もちろん」
さすがのライバル感…最後の最後は冴島さんもこの勝負を納得してくれた。
「わかりました…生徒会にはそう伝えておきます。柊奏覚えておきなさい…この勝負であなたに勝って、もう誰にも「どっちが上」なんて言わせないようにしてあげます。その時まで、今は引き分けってことにしといてあげます。……それでは」
そう言うと冴島さんは怖い顔をそのままに図書室を出ていった。
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