第32話 激突 柊 奏VS冴島 唯 ③


「あの〜…生徒会役員様がどのようなご要件でこちらへ〜…」


 へっぴり腰の柿島先輩が図書室を訪れた冴島さんに尋ねた。


「はい、生徒会長からの伝言がありまして、去年同様、集まったはいいものの、委員会でやれることがなさそうな場合、生徒会の活動を手伝ってほしいとのことです」


「はい〜……そうですか〜」


「すみません…生徒会も数が少なくて、お祭りともなると、需要と供給が間に合わなくて、どうしても人の手を借りたい状況なんですよ〜」


 笑って話す冴島さんだったのだが。


「だったら、あんたが頑張ればいいじゃない?それを覚悟して生徒会に入ったんじゃないの?」


 横からスパっと一刀両断…柊が柿島先輩の助け船、もとい冴島さんに突っかかりに行きたかったのか話に割り込んできた。


「……柊 奏…………さっきも言いましたよね?お祭りに対して、私たち生徒会にもかぎりがあるんです。だから協力を…」


「だから言ったわよね…それを覚悟して入ったんじゃないの?」


「はぁ…言ってもわからないようですね。さっき委員長さんに聞いて察しましたが、あなたたちはまだ催し物…決まってないですよね。期限はあと1週間…1週間で何かできるんですか?」


「当然でしょ。冴島 唯…あんたみたいな堅物に言われなくても図書委員は自分らで催しものをやれるわよ。あぁ…そうそう、生徒会が手伝ってくれるんだっけ?なら私が直々にあなたのことを指名してボロ雑巾のように使ってあげる。あー楽しみ〜」


 …うわぁ…やべぇ…


 目の前にはメンチをきりあう柊と冴島さん。この中に入っていくのはさすがの俺も勘弁してもらいたい。知らず知らずのうちに俺たち三人は受付席の下に隠れている。


「すごいねぇ…初めて見たよ〜これが、二人の戦いなんだねぇ」


「関心してる場合ですか!?これ、殴り合いになったりしないですよね!?」


「なるわけないじゃない……こんなのただの痴話喧嘩でしょ…」


 受付席の下で小声で言い合う三人。俺も初めて見た。これが、柊 奏VS冴島 唯なのか。ここまでの迫力だとは思わなかった。


 いまだに何か言い合っているのが聞こえてくる。


「どうしたらこれ、収まってくれますかねぇ?」


「VSがついてるくらいなんだし、何か勝負事で白黒つけばおとなしくなってくれるんじゃないかな?」


「………喫茶店…」


 …喫茶店?…


 いきなりどうしたんだ水原先輩。


「新緑祭……そこで決着をつければ…」


『新緑祭』『喫茶店』


 …そうだ!…


「ごめん、二人とも!!痴話喧嘩はもう終わりだ」


 俺は受付席をたち、バチバチと痴話喧嘩を続ける二人の間に割って入った。

 

 


 

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