第18話 委員会 ⑤
「それじゃあ、相坂君。本持ち係よろしくね」
柊はそう言うと、脚立に足をかけ頂上目指して登っていく。
「まぁ……柊さんもほどほどにね」
俺は柊に言葉を返すと、柊に渡すための本を手に取った。
そして…
ふとした時に事件は起きることになる。
…え?…
一瞬、脳内の思考能力がゼロになった。
柊が脚立に乗った…すなわちそれは、柊の身長が傘増しされたということ。
………。
…これはやばい…
今の俺の見ている光景…それは『柊のお尻』
まったく考えていなかった。よくよく考えれば、わかることだったのに、俺も何気なしに、早く仕事が終わるならと本の整理の役目を渡してしまった。
…どうしよう…
とは言ってもどうしようもない。目の前を見れば、形が想像できてしまうような距離感のお尻…下を見れば、モデルならではのすらっとした太もも…柊の下半身フルコースが襲いかかってきてしまい、視線のやり場に困ってしまう。
「…いさかくん……相坂君!」
「あ、はいっ!!」
柊に呼ばれていたのか…気づいて返事はしたが、声が裏返ってしまった。
「も〜、ぼーっとしてちゃダメだよ。早く本をちょーだい」
「あ〜、ごめんごめん」
俺は持っていた数冊の本を柊に渡した。
いけない…俺の中の煩悩が表に出てきてしまったようだ。だとしても、これは…
柊のお尻の距離までは数十センチ…下手げに離れれば、何か怪しまれる可能性が高くなる。この現象は前にあった歩道橋と同じ、『見たか、見てないか』これを探られるだけで俺の株は大暴落。
きっととんでもないひとことを言われ、俺の学校生活に非常に大きな損害を出すことになるだろう。
で、あればこの黄金の距離感は保たなければならない。柊は本を欲しい時に、片手を下にポンと出してきてくれる。チラッと上を見たときは運が良いことに本棚をずっと見ている様子だった。
大丈夫…俺の様子はきっと柊はわからない。このままどうにか本を渡してやり過ごす。
…そして、何事もなく帰るんだ!自宅に…
「柊先輩、ゆーくん…整理おわった〜?先輩たちは終わっちゃったよ〜」
本棚の横からひょっこりと顔を出す花梨。柿島先輩から話があったくらいから、先輩方面の手伝いをしに行っていた。
「あぁ。こっちももうちょっとで終わるから、帰るなら先に帰っちゃってくれ…」
日は沈み始めてはいるが、まだ明るさはある。今ならまだ暗くなる前に帰れるだろう。
「え〜、久しぶりに一緒に帰ろ〜よ〜………うわっ!柊先輩、凄いエッチな下着つけてるんですねっ!?これが高校生かぁ…すごいなぁ…」
「えぇっっ!?」
「あ…」
…花梨、お前…やったな…
花梨がたまたま俺のほうに歩いてきたときの出来事だった。
お前の身長からはそう見えてしまうのか…
その時の俺と柊の間の空気は、なんとも言えないような…なかなかに気まずい空気が流れた。
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