第17話 委員会 ④


「も〜、こんなんじゃ日が暮れちゃうよ、ゆーくん!」


 柊と整理作業を進めていると、花梨がお手洗いから帰ってきた。


「も〜日は暮れ始めてますよ〜…」


 適当に話を返しつつ、本の整理を進めていく。


 花梨の言うことにも一理ある。図書室全てをリニューアルするわけではないが、さすがに移動させる本が多すぎる。


 一応、半分以上の本の移動は完了させたが、このペースで進んでいくと、帰るのは夕方どころか夜になってしまう。


 どこのバカが言ったのか、『新入生おすすめ本貸し出しキャンペーン』は明日からなんて謳ってしまっている。どうにかならないものか…


「相坂くーん」


 …ん?…


 遠くから柿島先輩の呼ぶ声が聞こえてきた。


「はーい、なんですかー?」


「このままだとー、帰るの遅くなっちゃうからー、あとは僕と恋が残ってやってくからー、上がってもらっちゃっていいよー!」


 ………いいよーって……言われても…


 俺は下でスタンばっている柊の持つ本と、残った本の数を見返すが。


 …これは〜…ダメだろ…


 近くに用意された本の数はまだまだある。この量を二人でやるというのはなかなか骨の折れる作業になる。このまま帰るという行為はただただ俺の罪悪感しか生むことにしかならない。


 とはいえ水原先輩しかり、柊や花梨をこのまま残していて大丈夫だろうか?季節も春、真っ只中…日もまだ早く沈む。高校生とはいえ、女の子を夜道に解き放つのは如何なものか…いろいろと考えることがある。


「私は大丈夫……優がいるから…」


「うわっ!」


 いきなりの水原先輩の登場に、乗っていた脚立から落ちそうになった。いつの間にか本渡し係の柊ポジションに水原先輩が紛れ込んでいた。


「水原先輩…いつの間に……」


「今、さっきよ…これ、そっち側の本……こっちに紛れ込んでたから…」


「あ…そうですか〜…あはははは…」


 …ほんとにいつ来たんだ?…


 幽霊でも見てるかの気分になる。


「ねぇ、相坂君…私からの提案なんだけど、今、相坂君がやってる本入れ…私と変わってみない?見た感じもう重そうな本もなさそうだし、私なら本の場所も暗記してるから、作業もちょっとだけ早く終わりそうな気がするの」


 ………ん?…


 なんだか遠回しに。


『私のほうがもっと早く仕事できるんだから、どけよ、オラ!』


 そんな感じに言われてるような気がするのだが…


 いや、聞かなかったことにしよう。




 

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