第28話 グラビア練習会 ④


「それで、俺は何をしてればいいんだ?」


 こうして練習会の幕が上がった。ただ俺が何をするかが全くわからない。こうして部屋の中にずっと見てればいいのだろうか?柊に聞いてみると。


「あぁ!うん…相坂君はちょっとだけごめんなんだけど、私が着替えてくる時間の間、ベッドに座って待っててほしいの。着替え終わったらノックして入っていくから、その時に見た時の感想を言ってもらえると嬉しいな」


 ほんとに見てればいいだけだったらしい。


「それじゃあ、さっそくやってくけど、最初は今着てるこの服から…だからそこに座ってて、相坂君」


 俺は言われるがまま、柊のベッドに座っていく。『いつもここで柊は』ふとそんな気持ち悪いことも思ったが、それはさすがにライン越え案件。よしておくことにする。


「それじゃあ、やってくよ。相坂君」


 そして…


 柊のショータイムが始まっていく。最初は柊も言っていたここを訪れた時から着ているヒラヒラトップスにショートパンツスタイル…


 柊は俺をカメラ視点として一つ一つポーズを決めていく。


 それを見た俺は…


 …エッッッッッロ…


 これ、本音です…初めてまじまじとみるモデルの練習…柊の時折り見せる笑顔もそうなのだが。


 …服装が、あぁ、やばい!!…


 これでもかと見せる腹筋周り…トップスも脇が開いているということを活かした腕を上にあげたポーズ。服も軽いため、胸を習ってカーテンを張っている状態…そして長い足を活かしたパンツの見せ方…


 …やばい…こいつはプロだ…


 『何がやばい』


 もう、いろいろやばい。やばいとエロい以上の言葉が出てこない。町中を行く人でも派手な格好を見かけることはあるが、もう何もかもの格がちがう。


 プルンプルンにポヨンポヨン。


 とりあえず俺の中のIQ1ぐらいの感想をここに残しておくことにする。


※ ※ ※


 次々と服を着こなしていく柊だったがついに。


「長々とごめんね…次が最後の服だからもうちょっとだけよろしくね」


 そして柊は部屋をあとにした。


「いや〜……」


 なかなかにハードな一日だった。一日とはいえ、まだ午後の2時ぐらい。まだまだ半ばというような時間帯ではあるが、俺のメンタルは良い意味でも悪い意味でもボロボロになりそうだった。


 次々と出てくる衣装は過激なものばかり…脇が空いてるもの、胸が大きく開いたもの、はたまたもうお尻が見えるんじゃないかというくらいの短いパンツもの…


 途中からは柊のタブレットを使って一つ一つを撮影した。


 これが俺の精神を大きく削った。柊は衣装一つ一つの感想を聞きに俺の隣にやって来るのだ。正気の沙汰ではない。本気すぎて気づいてないのか胸が強くあたっているという自覚がないのかそこは神のみぞ知る世界。


 そして…


「じゃ〜ん!!どうこれ?彼シャツ…ドキッとくる?」


 …もうどうにかしてくれ…


 柊は俺の真ん前までやってくると、興味津々に聞いてきた。


 ブカブカのTシャツに透けたブラ、おまけにはTシャツのしたは履いてるか履いてないか、わからないような…たぶん履いてるであろうミニパンツ。

 

 …もう、おかしくなるー、絶対にやばいって…


 何か大人の雑誌の撮影にでもきているのか?そんな気分になる。


「ねぇ…相坂君?この服さぁ…下…履いてると思う?」


「下って……」


 下と言われれば目線はそこを向いてしまうもの。普段から冷静を装う俺だが、精神状態はパニック状態。


 …頼む、この女を止めてくれー!


「下って言ったら〜…もう女の子に言わせちゃうの?」


 …もういい、もういい、言わなくていいから!…


「もういいだろ、柊さん…これ以上はちょっと」


「ふふふ!あはははは!もうなんて顔をしてるの相坂君。ほんとかわいいなぁ…大丈夫だよ!ちゃんと履いてますよ……パンツは…」


「え、パン…ツ?」


 アクセント的にそのパンツは下着のほうのパンツの発音。


 …え、じゃあ今、柊はパンツにダボダボシャツってこと?…


 さらに追い討ちをかけるように。


「はい、ドーン!!」


「うわっ!」


 柊は俺の目の前まだ来ると、力いっぱい両手で俺のことをベッドへ押し込んできた。


「な、何してるの!?柊さん」


「ごめんね…最後は馬乗り…こういうアングルの撮影も必要だから…」


 そう言うと、柊は前屈みに顔を俺のほうへと近づけてきた。


「柊さん!?近い、近いよ!!」


 言葉を発せど返事は来ない。


 そして顔が近くなり、視線は逃げるように別方向へ…柊の下側へと向けていったのだが…


 ………え?…


 柊の顔が近すぎてかわすように下へと向けた視線…まさかとは思ったがそれはきっと間違いない。そこにはまさかの大大とあらわになる2つの柔らかそうなお胸が根本から先端まで外界に姿を現していた。


 …お前!!下着はどうした!?…


 ものすごく言葉にしたいが、言葉にはできない。してしまえばもしかしたら簡単かもしれない。ただこの状況で。


「柊さん全部見えてますよ…」


 ……。


 言えるかボケェェェェ!!


 言ったらそのあと何を言われるかもわからない。今は黙って見届けるしかない。


「どうかしたの?相坂君」


 …あ、緊急事態です…

 

 あなたのお胸が大変なことに。


 …もうブラがなくてブラブラで…あぁブラブラ…


「ふふっ、はーい、今日はここまででーす。ご協力ありがとうございました、相坂君。また機会があったらよろしくね」


 こうして俺の初めての波瀾万丈のグラビア練習会は幕を閉じていくのであった。


※ ※ ※


 しばらくたったあと…


 俺はコンビニで一冊の雑誌を手にとっていた。柊の話ではこれに柊のグラビア写真が載っているという話だ。


 あんな大胆な……もとい、いろんなポーズをしていた柊がどんな写真を取っているのかが気になった。


 そして…


「あれ?…いたって普通じゃん…」


 雑誌で見た柊は色っぽさというよりかは季節にあった服装。これはこれで素晴らしい写真ではあるのだが…


「あの練習…なんだったんだ?」


 ふとそんなことを思ったとある日の朝だった。


 

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