第27話 グラビア練習会 ③


 部屋に入ると、そこは夢のような国だった。ピンクを基調とした装飾にベッド周りにはたくさんのぬいぐるみ…異性の部屋に入るというのに、抵抗が凄くあったが、机近くのコルクボードにある懐かしい中学の頃の写真を見てふと見入ってしまった。


「なつかしー」


 俺の写ってるものも何枚かあり、ふと「いつ撮られたんだっけ?」と考えてしまうところもあった。


 カチャ…


 ドアのほうから音が聞こえた…音のほうを見ると、柊が笑顔で部屋の鍵を閉めている。


「誰もいないんだろう?別に鍵なんて閉めなくても…」


 聞いてみると。


「念のため…念のためよ〜…」


 と笑みを浮かべ答えた。


 それほどまでに部屋に入って来られたくないのだろうか。柊がガードが固いというのは親に対しても…ふとそんなことを思ってしまった。


※ ※ ※


「それじゃあ、相坂君。早速のお話なんだけど、まずはこれを見て欲しいの」


 柊はそう言うと俺に可愛く装飾されたスマホを見せてきた。


 そこには…


「グラビア撮影会のお知らせ…題材は春のトレンド」


 と概要だったりが事細かに書かれていた。


「そうなの。相坂君は私がモデルの仕事をやってるのって知ってる?」


「まぁ…噂くらいには…」


 …たまにコンビニの雑誌でチラッと見かけることがあるくらいだけど…


「私がこのお仕事をするようになったのは高一になってからなんだけど、季節に合う服装を撮りましょうってことでこういう撮影会が定期的に予定されてるの」


「ふ〜ん…」


 …やっぱ生きてる世界が違う人はすごいなぁ…


「それで〜…だから〜」


 指をツンツンとさせもじもじとし始めた柊。そんな目の前でもじもじとされても俺が困るだけなのだが。


「それで?」


「あの〜……ごめん!!今日一日私のために時間を使ってくれないかな!?私のファッションショーを見てってほしいの!これが私からのお願い…絶対に、ぜーったいに何かしらで埋め合わせはするから!」


 手を合わせて全力でお願いしてくる柊。その姿からはおふざけというふうには思えない。きっと何か真剣な話なのだろう。


 とはいえ…


 …お手伝いってグラビアの練習のことだったの?…


 警戒していたベクトルの方向が逆を向いたようでなんだか力が抜けてしまった。これはこれで危ない方向を向いているのは間違いないが、ここで全部済むというのであれば、変に外に気を遣わなくてすむ。


 …この小娘…だから鍵を…


 とりあえず柊と外出を避けられただけでもよしとしよう。


「わかった…付き合うよ。そのファッションショー…どのみち俺は逃げられないんでしょ?」


「あれ、何か勘づいちゃった?…ペロ」


 こうして観客1人だけのファッションショーが幕を開けていくのだった。


 

 


 


 

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