第26話 グラビア練習会 ②
そして時は流れて土曜日…
俺はなるべく周囲にバレないようにかつ怪しまれないように…しれっと柊の住むマンションの部屋の前まで来ていた。さすがに朝の10時ぐらいともなれば、学生も歩き出す。デートなんかと思われてもタチが悪い。
柊からは。
「朝の10時にウチに来て」としか言われていない。
とは言ってもだ。
…男を自分の家に呼ぶなんてこと、普通しないだろ…
ここに来るのはすごく抵抗がある。
俺もそうだが、きっと柊もそう…恋愛感があるわけでもないのに、人を呼ぶって…ギャルゲーじゃないんだ…俺は柊を攻略でもするのか?そんなふざけたことを思ってしまう。
「ふぅ…」
そして、やはりこのインターホンというのは緊張する。鳴ってしまえば、そこから今日と言う日のスタート…手伝ってぐらいしか言われてもいないし、きっと長くはならないんだろうとは予想している。とりあえずの午前中見込みのお昼代ぐらいだけは一応持参してきた。
「今から外へ出かけまーす!」
なんて言われなければいいのだが…
…よし…
ピンポーン
覚悟を決め、柊の家のインターホンを押した。
すると…
「どうぞー」
インターホンから柊の元気な声が聞こえてきた。さぁ、賽は投げられた…あの時の体調の悪かった時とは状況が全く違う。今回は健全な柊がスタンバイしている。
「行くか…」
俺は一息入れ、柊の家のドアを開けた。
※ ※ ※
「いらっしゃい!相坂君」
………え?…
ドアを開け、すぐに俺は言葉に詰まってしまった…普通、「おじゃまします」とか「こんにちは」とかそういう挨拶から入っていくのが主流のはずだ。もちろん俺もそう…そこらへんはさすがにわきまえている。
ただ俺の目の前に立つのは、ヘソだしヒラヒラのトップスにショートパンツ…春というより夏なんじゃないかというような露出の大きな服を着たキラキラな柊が立っていた。
元気な柊どころか、スーパー柊の登場である。
さすがにそんなものがいきなり出てきたら、デフォルトの挨拶なんて出てこなくなってしまうというもの…目のやり場にも困る。
「相坂君…どうかな?似合ってる…かな?」
…えぇ!?…
いきなりの『感想求む』に頭がついていかない。
「うん…似合ってる…んじゃないかな…」
………特にヘソだしあたりが…
恥ずかしくなり、見たそのままの感想を簡単に柊に伝えた。だが、それは勘弁していただきたい。俺がそんな服装を見てきたのは、あくまで雑誌の中…目の前でそれを体現されるとなると、それはもう…
言葉にもならない。
「むーーー…ホントに思ってる?相坂君?……女の子ってちゃんと言ってもらわないとわからないものなんだからね!」
膨れっ面で軽い説教を受ける俺。普段からこんな色っぽい格好をしているのだろうか?そんな疑問も沸いたが。
「ごめん…」
俺には謝ることしかできない。
「ふふっ!!いいよっ!相坂君はかわいいね!…それじゃあ相坂君!さっそくなんだけど私の部屋までついて来てくれるかな?そこでちょっとだけ手伝ってほしいことがあるの!…ちゃんとお茶菓子も準備してあるからそこでゆっくりお話しましょ」
………は?…部屋?…お茶菓子?…
何か嫌な予感がしそうなそんな雰囲気を俺は感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます