第25話 グラビア練習会 ①
「あの…相坂君?……今週の土日って空いてたりするかな?」
「は?」
とある昼休みの出来事だった。人の少ない図書室…そこで俺は柊から謎のお誘いを受けた。
…何を言ってるんだこいつは…
自分で何を言っているのかをわかってほしい。男にしろ女にしろ、「土日暇?」なんて誘ってたらそれはデートか何かに勘違いされるだろう。俺にとってどころか一般人にとっての柊の格は相当に高い、柊が俺とデートをしたいというわけではないのは明白なのは間違いないのだが…
………。
やはりダメだ。本当に困りごとなのかもしれないが、柊と行動を共にする。それは自身の身を滅ぼしかねないようなことだ。
ここ適当な理由…当たり障りのないことを言ってそれっぽくお断りを。
「ごめん…柊さん。土日はちょっと家族と予定入れちゃってて埋まっちゃってるんだよね〜…」
俺は『よくあるお断り理由その①』を取り付け、柊のお誘いにお断りを入れた。
はずだったのだが…
ガシッッ!!
柊は俺の手をおもむろに掴んできた。しかも握る力もなかなかに強い。
「………断る理由……考えたな?……」
「え?」
ボソッと何か言ってるのはわかったが、内容までは聞こえなかった。そして、掴んだ手をそのままに柊は俺に言った。
「………あいさかくーん…断ろうとしてるのがバレバレだよー…せっかく女の子が誘って来てるんだからー……こういう誘いは乗っておいたほうがいいと思うなー……だいじょーぶー…デートってわけじゃないからー…ちょーっとだけお手伝いしてほしいんだよねー…」
…やばい…
棒読みかつ囁いてくるような柊のセリフに、ものすごい圧を感じる。それを誇張するかごとく、柊が俺の横顔数センチまで近づいてきている。
まずい…隣から発せられるオーラは間違いなく人を殺せるようなもの。見なくてもわかる…絶対に柊の瞳に光など灯ってはいない。
『断ったら、殺す…』
その恐怖感から俺も怖くて隣を見られない…
…こいつ…絶対、視線で人を殺せる…
俺は初めて感じた…
これが数多くの告白をぶった斬ってきた『柊 奏の殺気』…こんなのを浴びてフラれているのかと思うと、告白する人たちに同情の念を抱いてしまう。これが柊 奏という存在に立ち向かう者の宿命なのか!?
命の危機を感じた俺の答えは…
「はい!土日は開けるようにしておきます!」
俺は真横から襲いかかる恐怖にK.Oされた。
「ありがとー!!そうだよね!相坂君は女の子の誘いを断るような人じゃないもんね!私は信じてたよ」
柊は掴んでた手を離すと、ポンと手を叩き、今までとは正反対の可愛らしい笑みを俺に向けかけてきた。
誘いを断る人じゃない……俺が?
…あれ…なんか釘刺されちゃってます?…
『柊 奏』…彼女の怖さを少しばかり垣間見たお昼休みだった。
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