第39話 梅雨のひととき ②
翌日…
「ひっっくしょん!!」
ピーー。
………38℃…
「うわぁ……マジか〜…やっちまったー…」
翌朝の出来事だった。朝、起きてから俺は体のダルさを覚えた…最初こそ「大丈夫だろ」そんなつもりでいたのだが、やっぱり体がふわっとする…そんな感覚があったため、念の為体温を測ってみたのだが、ご覧の通りの数値…なんともなかなかに高い数値を俺の体は叩き出していた。
熱なんていつぶりだろうか。中学…いや小学校以来か、滅多に熱が出ないこの俺が熱を出してしまうとは…
とはいえ、原因は明白だ。昨日、帰りに大雨の中を走って帰ったというのが絶対に俺の体に悪さをしている。びしょびしょで気持ち悪いというのもあったが、けっこう『風邪』という概念を気にして、帰ってすぐにシャワーを浴びをしたのだが…それでもダメだったようだ。
「勇太くーん、お母さんお仕事行っちゃうけど、恵子ちゃんにはお休みしますって連絡しておくから、今日は一日ゆっくりしてるんだよ!薬はいっぱい下に買ってあるから!あと、おかゆもちゃんと作ってあるから、お腹が空いたら食べるんだよ。あとあと、ほんとにダメなら絶対に連絡するんだよ!お母さん、速攻帰ってくるから!」
…朝から騒がしいな…
「はいはい…わかった、わかった…いいよ、そんな心配しなくたって。ただの風邪なんだし…母さんも早く仕事いってきなよ」
部屋のドア越しからひょっこり顔を出し、話しかけてくる母さんを俺はドアを閉めるようにして追い返した。昔から心配性すぎる母さん。何かあるたびに過剰な準備をするのはいつものことだ。思春期…そういうものかはわからないが、鬱陶しい…そんなことを思ってしまう今日このごろだ。
「もー、勇太くん。お母さん本気で心配してるんだよ!!息子が苦しんでるっていうのに呑気に仕事なんてっ!!」
カチャ…
「あ、こらっ勇太君!!開けなさい!!」
俺は口うるさい母さんから逃れるため部屋の鍵を閉めた。
小柄、童顔、童声…側から見れば子供のような容姿の母さんだが、こういう家族に何かがあった時は強情でなかなか引いてくれない。
ドンドンドンドン!
「勇太君、開けなさい!」
何度も部屋のドアを叩く母さん。
「何してるんだよ…いい加減早く仕事行けって…こんなドア越しで小競り合いをしてる場合なんかじゃないだろ。こんなことしてたら逆に俺の体温が上がっちまうよ」
そう言うと。
「えっ、ごめん!!勇太君、大丈夫!?」
…もう……めんどくさい…
太鼓のように叩いていたドアは鳴りを潜めた。
「母さんももう仕事の時間でしょ、早く行かなくて大丈夫?」
「あぁっ!!」
ドアごしに語りかけると、ドアの向こうから焦ったような声が聞こえてきた。もちろんそれは折り込み済みの手段…時刻は7時半を回るくらい…母さんがそれくらいの時間にいつも家を出ていっているのは知っている。埒が開かないこの時間の回避手段として、俺はそれを裏手に取った。
「やばいーー!!遅れちゃうー!!じゃあ勇太君、体調が悪くなったら絶対にお母さんに連絡するんだよ!絶対に絶対だよーー」
「はーい…」
遠のく声を確認しながら階段を急いで降りてゆく母さんを部屋の中から見送った。
…あぁ…これでやっとゆっくりできる…
熱はあるが、気持ちが悪いとかそういうのはない。ただただだるいだけ。
…とりあえずはもう一眠りでもして、スマホのゲームでもやってだらだらと…
そんな一人での暇つぶし手段を考えている時だった。
「よう!風邪引いたんだってな。少年?」
……………。
…あぁ…あと一人、もっとめんどくさいのがいたわ…
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