第40話 梅雨のひととき ③
「はぁ…いつも窓から入ってくるなって言ってるだろ……
「なーんだよ、少年…こちとら心配してわざわざここまで来てやったんだぞぉ?」
「わざわざ来るな、バカ妹…どこの妹が脚立片手に俺の部屋までやってくるんだよ…来るならちゃんとドアから来い、ドアから…」
不適な笑みさえ浮かべながら答える柚子に俺もめんどくさそうに答えた。
「つれねぇなぁ…少年、あたしにとって、こんなの準備運動にもならないって知ってるだろう?鍛え方のわけが違う」
「そんなキリッと決められてもなんの説得力にもなんねぇよ!」
そんな他愛もない話をしている相手は俺の妹。
『相坂 柚子』
相坂家二人兄弟の長女で、中学三年生…長い黒髪をハイポニーテールにしていて、身長は中3の平均並。本人には調子に乗られるため言わないが、スタイルは我が妹ながらすごくいい。というのも親父がジム経営をしているため、よく体を鍛えに親父のジムへと行っている…というのが裏にはあり『大きな体を作る』というわけではなく『引き締まった体をつくる』というのを耳タコのように聞かされてきたため、それを有言実行して体づくりをしているため、運動神経もよくスタイルもすごくいい。
ちなみに、こんな脳筋のような生活を送ってるように見えても、学校では生徒会長をしているらしく憧れの先輩ランキングの中でNo. 1を誇っている…らしい。
正直…「これで!?」と思いもしたのだが、母さん曰く。
「ほんとに優等生って感じだったの〜」
と中学のイベントがあるたびにそんな話を聞かされた。
こいつはもう一つ人格でも持っているのだろうか?
そんな謎を持つ不思議で…とてつもなく生意気な妹だ。
「はぁ…で、今日は何の用だ?用がなきゃお前もここに来ないだろ?」
「おぅ、そうだ、そうだ!」
ベッドに足を組んで座る柚子は「そうだ!」と手をポンと叩いた。
「つかぬことを聞きたいんだが、兄ちゃんよ…兄ちゃんには実は……彼女さんがいたりするのかい?」
「…………は?」
…何を言ってるんだ、この愚妹は…
いきなりのことでポカンとしてしまう。どこの勇太さんが彼女を作ってきた?正直妹様を「バカだろ」と思ってしまう。
「んなわけねぇだろ…俺の私生活のどこに『彼女』という文字がある?」
「んー?そうかい、そうかい…」
柚子はそう言うとポケットからスマホを出し、ポチポチと画面をいじりだす。
「じゃあ、これはなんだい?……これはもしかして、もしかすると…物的証拠になっちゃうんじゃないのかな?」
柚子がニヤニヤと遠目に見せてくるスマホ…そこに写っていたのは、俺と柊が二人で歩く下校中の写真だった。
「お前、それをいつ撮った?」
「さぁねぇ………で、で、で!これは兄ちゃんの彼女なの!?どうなの!?吐いちゃいなよ!大丈夫…パパやママには黙っといてあげるから!あたしの口は固いよ!」
「…………はぁ」
一気に俺の目の前まで迫る柚子に、心の底からの大きなため息がでた。
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