第42話 梅雨のひととき ⑤
「ふぅ…」
そして時間は午後の4時を過ぎようとしていた。軽い食事と薬、そしておでこには冷えピタスタイル…完全防備の中スマホポチポチをしていたら、もうそんな時間になっていた。
きっと学校も終わり、もう柊たちも帰ってる時間帯だろう。
とはいえ…
…なんだ、また雨か…
最近は梅雨の影響もあり、夕暮れ時期になると必ずと言っていいほど雨が降ってくる。しかも今日は雷付き…いずれものすごい勢いの雨がこの地域にも押し寄せてくるのだろう。
ピーーー。
体温を測ってみると、37.4℃。
まぁ、なんともな体温。行けるか、行かないかは明日の体調次第…といったそんな感じの微妙な体温だ。
すると…
「たっだいまー!!よー、兄妹!!体調は良くなったか!?」
ドアをぶち破ってくるんじゃないかという勢いで柚子が俺の部屋に入ってきた。柚子も中学校が終わったようだ。
「よー、じゃねえ…お前はもう少し…慎ましくノックとかして部屋に入ってこれないのか?」
「え〜、なんでよー…兄妹なんだから別にいいじゃん…………あ〜…」
柚子は何か察したのか頬に人差し指をあてニヤつき始めた。
…また何か変なことを思いついたな…
何年も一緒にいるんだ、柚子のにやけ方して何を考えているかはなんとなくはわかる。これはろくでもない時の顔だ。
「そりゃそうだよね〜…下の上下運動中だったら困るもんねぇ…ごめんね!兄ちゃん!!」
「するか、ボケっっ!!」
何を言っているか一瞬でわかった俺は、ゼロタイムで柚子につっこんだ。一体、どこでそんな知力を学んでくるんだ…そこが気になる。
「え、してないの!?……誰もいなかったのに!?………あー……おかずがいなかったから?」
「失せろ」
目の前で自分なりの悩殺セクシーポーズを見せる柚子を俺はひとことであしらった。
「がーーん……こんなにも…こんなにも兄ちゃんのために鍛え上げた肉体美なのに……トホホ………ひどい…ひどいよ兄ちゃん!!兄ちゃんは、こんなに努力してる妹でさえも想像の世界に呼んでくれないんだね!!」
なぜか逆ギレして、俺の足に泣きついてくる柚子。
「呼ぶか、この淫乱女!それに俺だって………俺だって…」
…ダメだこれ以上は火に油を注ぐようなもの。言ってはならない…
「ん?…俺だって?……なんだって?にーちゃん?」
しがみつく柚子にニヤニヤされながら問い返されている…そんな時だった。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
…こんな時間に?…
誰かお客さんだろうか?それだとしても、親は現在お仕事中…家には俺と柚子の二人だけしかいない。ともなれば、俺か柚子かがお客さんの対応をしなければならないのだが。
だが、これは…
「柚子!ちょっと離れろ、お客さんだ!俺が出てくる…」
俺は力づく、しがみついている柚子を突き放す。
これはチャンス。しがみつく柚子をこの部屋から追い出す最大のチャンスなのだ。
「むーーお客さんか〜…それじゃあ仕方ないかぁ………運が良かったな、兄ちゃん!このことはあとで……あとでゆっくりと部屋で語り合おうじゃないか!」
「あー、はいはい…また今度…」
一人語りしている柚子を俺は適当にあしらった。
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