第60話 番外編 とある夏の日のお話
「え?」
「え?」
それは突然に訪れた。
夏のとある日…俺は二次元グッズを買い漁ろうと某逆三角形の建物へと足を運んでいた。
「あの〜…」
たまたまだった…ふと「コスプレエリアでも少し見ていくか」そんな軽い気持ちで訪れた近くの広場…賑わってるところがあるなと気になって見に来た時に事件は起きた。
「あ、あ、あのっ!…相坂さん…これは……」
目の前で焦り恥じらっているのはみたことのある藍色の髪…それとこれは魔法少女か何かなのか?ステッキを片手に大きく胸元の開いた魔法衣…そしてパンツが見えるんじゃないかと思うくらいのミニスカ。
…………。
「……何してるの……冴島さん?…」
冴島さんがそこにはいた。
「ち、ち、ち、違うんです!!相坂さんっ!!こ、こ、こ、これは、そのっ!!友達と一緒にやろうって、応募してて!それでっ!!」
「ふ〜ん…」
…友達ねぇ…
見渡す限り、友達という概念の人間は見当たらない。普通友達と来てるとかなら近くでやるもんじゃなかろうか…
そうは思ったが、今はとりあえず…
「うん…凄く可愛いと思うよ!趣味なんて人それぞれだ!誇っていい!君は可愛い!」
俺は冴島さんにサムズアップでコスプレ姿を讃え、黙って冴島さんに背を向けた。
これでいい…
可愛いのは事実。本来なら写真の一枚、二枚撮って帰るものだろうが、学校の人間…主に学生たちにバレるのはきっと冴島さんだって嫌だろう…ここは黙って帰るというのが優しさというものだ。
この記憶は俺の頭だけに…
そう思い、俺は列から外れようと列の外へと足を踏み出した。
その時…
ガシッ!!
後ろからシャツの首元を強く掴まれた。
「待ってください、相坂さん…ちょっとだけお話があります」
…え〜〜……
※ ※ ※
ドンっ!!
俺はひとけのない所に連れ込まれると、冴島さんから壁ドンをされた。
「あの…相坂さん。今日ここで見たことは全て忘れてください…いいですね…」
人でも殺すつもりか?今向けられているのはそんな冷たい視線。
「え〜?…それはちょっと〜…」
あまりにも起きた出来事の印象が強すぎる。これをすぐに忘れろと言われてもなかなかに厳しいところがあるのだが。
しかし…
「もう一回だけ言ってあげます……忘れてください……忘れられないというなら……そうですね〜…記憶が飛ぶくらいに○玉を蹴って差し上げましょうか?」
「やめて!死んじゃうから!!大丈夫…大丈夫だ…ちゃんと忘れる!絶対学校の人間にも言わないから、ほんとに大丈夫だ!!」
冷たい視線から逃げるように俺は冴島さんに強く言い返した。
「そうですか…それならすぐにそうしてください…では、私は先程のエリアに戻ります。くれぐれも…」
「大丈夫だ!わかったから!」
壁ドン状態から背を向け、この場から去ろうとする冴島さんの冷たい横目を無理矢理遮った。
「あと…」
…まだ何かあるのか?…
足を止めた冴島さんを見ると。
「特に柊奏だけには絶対に言わないでください。言ったら……○玉、ヒールで潰しちゃいますから…」
「は…はい…肝に命じておきます…」
なんとも苦い思い出が残った夏のひとときだった。
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