第2話 柊 奏
俺たちが学校に着くと、門の前にはたくさんの人が輪のように群がり、掲示板に書かれているクラス割りを見にきていた。去年もそうだが、相当な数の人だかり…きっと毎年こんななんだろうとは思ってはいる。
そんな俺もライブのモッシュ状態のような人だかりを抜け、掲示板を確認していくが。
「2年A組…」
これが俺のこれからの1年間を平和に過ごすクラスのようだ。
「あ、ボクもA組だよ!やったね!勇太!!」
相変わらずの彼女ムーブ。全く知らない人間の前で女子制服でも着ていたら、ドキッとさせられてしまうような言動だ。
「そうか…じゃあさっさと教室に行ってゆっくり…」
その時だった。
「柊さんだ!」
「やっぱかわいいなぁ!」
俺の声を遮るように急に周囲がざわつき始めた。ざわつきの先へ目をやると、そこには芸能人かと思われるような1人の女の子が掲示板のほうへと歩いてきていた。
『
俺と同じく、今年高校2年になる女子高生で、金に輝くブロンドの髪に翠玉の瞳が特徴。身長は160半ばで、胸もあり、プロポーション抜群。おまけに成績優秀。モデルの仕事もしているようでこの学校のアイドルと言っても過言ではないような存在だ。
『それほどの女の子、彼氏はいないのか?』
そこが気になるところだと思うが。
そんな柊 奏。噂によればものすごくガードが固いらしい。俺も中学から一緒ではあるのだが、先輩、後輩、同級生。何人ものアタックを木っ端微塵に打ち砕いてきたという噂は聞いている。
この木っ端微塵のせいかはわからないが年々、告白してくる男は減ってきているようで、今でも少し聞きさえするが確かに昔よりかは減ってきている気がする。昔は毎日のように告白を突っぱねたという話を聞いた。その頃よりかはさすがに…
とは言ったものの。
…すげえ、人気だなぁ…
さすがはこの学校のアイドルだ。告白はなくともちやほやはされる現実は変わらない。きっとまだまだこの美少女は狙われるに違いない。
…とりあえず、この子には関わらないように生きよう…
そうしなければ俺の命が危ない。
なんたらかんたらに祟りなしとはよく言うだろう。俺は平和主義者…こんな美少女と関わったら戦乱の世に巻き込まれること間違いなし。
…お願いします…別クラスでありますように…
※ ※ ※
そして…
「A組になった柊 奏です。これからみなさんといち早く仲良くなって楽しい学校生活を送れればと思っています。今年1年よろしくお願いします」
クラス中に拍手が巻き起こった。そんな中…
…なんということだ…
掲示板を見逃していた。俺の名前は『あ』から始まるため、大抵左なり、右なりの隅っこになるケースが多い。それゆえに基本全部の名前を目にすることはあまりないのだが。
あまりに不覚だった。
これでは…
…これでは俺の平和な学園生活に支障をきたす…
…しかもなんで席が俺の隣なんだ!…
普通学年のはじまりなら名前の順とかそんなもののはず…なぜ今年から席順がランダムになっているのか謎でしかなかった。
そんな頭を抱える俺に隣から。
「相坂君…今年1年よろしくね」
柊が座りながらこちらに可愛らしくウインクをして挨拶してきた。さすがはモデル、挨拶にウインク付きとは…これがアイドルというものなのか?だが、柊にとってはこんなのも社交辞令みたいなものだろう。
「あぁ…よろしく…」
とりあえず俺も柊に軽い挨拶だけは返しておくことにした。
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