第4話 下校 ①
キーン…コーン…カーン…コーン
「よーし…今日の授業はこれで終わりだ。放課後に部活動の勧誘会があったりするから、遅刻しないように…それじゃあな」
チャイムと共に俺たちの担任の女教師『清水 恵子』通称『恵ちゃん』は出席簿片手に教室からそそくさと出ていった。
…さてと、俺も…
席を立ち、学校指定のバックをリュックのように背負った。
俺は特に部活動に入っているわけではない。強いて言うなら、親父がジムのトレーナーをやっているため、一応帰ってから暇な時にジムに行って体を鍛えている。それが俺にとってのちょっとしたルーティンであり部活動のようなものだ。
「勇太、帰るの?」
後ろから瑠花に声をかけられた。
「あぁ…部活に入ってるわけでもないしな。早々においとまさせてもらうよ」
瑠花は吹奏楽部に所属している。これから校庭に出て、部活動の勧誘会ってところだろうか。
「勇太も運動神経いいんだから、運動部にでも入ればいいのに」
そんな瑠花に。
「ないな。俺は部活動で汗を流すということより、『暇』という時間を大事にする人間なんだ」
といかにも「有意義だろ」と言わんばかりの堂々とした態度で返事を返した。
「ふ〜ん…そうなんだ…」
「あぁ。そういうものだ」
それっぽい理由を作っては見たが、これに関してはただただ俺が部活をやりたくないだけだ。俺の最大の欠点だが、たくさんの人と関わるということは大の苦手というのがある。簡単に言ってしまえば、協調性が薄い人間なのだ。
「じゃあ、俺は帰るぞ」
「うん、また明日!」
瑠花への挨拶を終えると、1人のんびりと家への帰路へとついた。
※ ※ ※
帰り道。学校を出て少しした時だった。前方約50メートルくらい先に、金の髪の嫌な人物が目に入ってしまった。
…げっ!、、、柊…
柊が少し前を歩いているではないか。
今日はとことんついてない。こんなところでも柊が目に入ってしまうとは。せめて帰りぐらいはゆっくりとさせてほしいところ。
しかし。
…距離はある…
50メートルも離れていれば、きっとどうにかなる。これだけの距離があるならきっと追いつくことはないはずだ。柊の家がどこかは知らないが、早々に視界から消えてくれることを祈るばかり。
ここから俺と柊の(俺が勝手にそう思っているだけ)の下校バトルが始まるのであった。
まずは学校からの長い直線。ここが大事だ。直線ということでスピードが出やすい。相手は女子、帰宅を極めた俺の歩くスピードは早い。
…ここはなるべくスピードを合わせるようにして…
そう考えていたのだが、柊は俺の予想の上をいく。
…あれ?柊…ものすごく遅くないか…
なぜかだんだんと距離が詰まる直線。俺はけっこうスピードに気を使ったはずだが、なぜだが距離が詰まっていく。
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