第53話 テーマパーク ①


 そして…


「すご〜い!勇太君、あれ見て!テレビでやってたやつだよ!!」


 入ったその瞬間…いや、入る前からテンションマックスの奏…視界に入る壮大なアトラクションを見てわーわーと子供のようにはしゃぎ回っていて、見てるこっちが恥ずかしくなってくる。


「おい、奏。はしゃぎすぎだろ?もうちょっと抑えて…」


「何言ってるの!?せっかくこういう場所に来たんだからうんと楽しまないと!」


 全く聞いてもらえなかった。


 それもそのはず…今いるのは最近できたという都内にある〇〇遊園地。俺と奏は今、二人でこのテーマパーク内を歩いている最中。さすがの俺でさえも目の前のアトラクションを見ていると男心が揺さぶられてしまう。


 楽しそう…そう思ってしまうのは嘘ではない。


「ねぇ、勇太君、どこから行こっか?ジェットコースター?コーヒーカップ?私はどこからでも大丈夫だよ!」


 目の前でくるくると回り、楽しそうにはしゃぐ奏。


 そんな奏に…


 …相変わらず元気ですね〜奏さ〜ん…


 高すぎるテンションについていくのもやっとな俺だった。


※ ※ ※


 あの後、瑠花から「男なんだから、勇太から誘うんだよ」と無理やりに手渡された遊園地チケット(宿泊ホテル付き)


 一応週に一回はデートをするなんて決まりがあったため、試しに奏にこの話を出してみたのだが、奏のテンションは急に右肩上がりの最高潮へ。すぐに土日の予定を開け始めた。


 そしてそれからというもの…一緒に買い物に行かされ服をコーディネートされたり、ペアグッズを買わされたり、挙げ句の果てにはランジェリーショップまで入らされた。なにゆえ人の下着を選ぶしかなかったのかよくわからなかったが相当恥ずかしかった。


 とはいえ…


 喜んでくれているなら、まぁ…いい。最後の瑠花からチケットを渡された時のニヤケ面が気になったが、考えるのが大変そうな週一のデートの案件を埋めることができた。とりあえずは瑠花には一応感謝しておくことにする。ありがとう…


※ ※ ※


 それにしても…


「すげぇ、格好だなぁ…」


 現地集合で奏に会った時から思った。キャラクターが印刷されたヘソ出しのシャツに腿が大きく出るデニムのショートパンツ…頭にはこの遊園地のマスコットキャラの帽子。


 もちろんモデルをやってるだけあって、スタイルも抜群に良いのはわかっていたが、俺も初めて見た時は「あれが俺の彼女か!?」と思わず二度見してしまった。


「ほら、勇太君!ぼーっとしてないで、一緒に写真撮ろ!?すいませ〜ん!一枚写真撮ってほしいんですけどーー」


 スマホ片手に遊園地マスコットの元へ手を引かれ、更にカメラマンまで引き連れてきてしまうほどの奏の行動力…


 なんというコミュ力の高さ…俺には到底手に入らないものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る