第16話 最後の目的地
ひとまず、あれ以上進んでも僕がどうして魔物に狙われるのかがわかるどころか、むしろ余計に危険な目に遭う可能性が高かったため、僕とシャルは一緒に洞窟から出ることにした。
「洞窟だから何か危険な目に遭うことは予想してたけど、色々と予想外のことが起きて驚いちゃったね……シャルが居なかったら、今頃どうなってたかわからないよ、本当にありがとう、シャル」
僕が、僕のことを助けてくれたシャルに感謝を伝えると、シャルは首を横に振って言った。
「お礼を言うのは私の方だよ……ううん、お礼だけじゃなくて、ウェンには謝らないと……私のせいで、ウェンが危険な目に遭っちゃうところだったんだから……ウェン、本当にご────」
シャルが僕に謝ろうとした時、僕はそんなシャルの言葉を遮るように首を横に振って言う。
「謝らなくていいよ、僕がしたくてしたことなんだから……それに、シャルはその後で僕のことを助けてくれた……だから、謝ることなんて何も無いよ」
「ウェン……」
小さな声で僕の名前を呟いたシャルは、少し間を空けてからそれに納得したように頷いて明るい笑顔で言った。
「そうだね……じゃあ、ウェン────ありがとう」
そう言ってくれたシャルに対して、僕も同じく笑顔になって返す。
「うん……僕の方こそ、本当にありがとう」
僕たちは互いに笑顔で感謝を伝え合うと、次の目的地へ向けて歩き出した。
僕とシャルが決めた三つの目的地、魔物のよく出る街、洞窟、そして最後の目的地が────魔王軍の領地。
「魔王軍の領地に行って、魔王軍の人を見つけて直接聞き出せば、少なくとも僕のことを狙ってきているのが魔王軍に関連する人物なのか、もしくは全く無関係の人物なのかがわかるから、これが成功すればかなり大きな手掛かりになるはずだよ」
「うん!今思ったら、さっきの不自然の昆虫系の魔物の群れも、もしかしたら魔王軍が仕掛けてきたことなのかも」
確かに、洞窟の奥であんなにも昆虫系の魔物の群れが現れるというのはどう考えても不自然なことだし、それほどまでに魔物の統率を取ることができるのはそれこそ魔王軍ぐらいだろう。
「そうだね」
僕がそのシャルの考えに同意するように頷いてそう言うと、シャルは大きな声で言った。
「さっきはよくもウェンと私のことを……!この恨みは、ウェンのことを狙ってきているやつを見つけ出して焼き払うことで晴らすから!」
「ほ、程々にね」
やる気十分なシャルのことを少し落ち着けるようにそう伝えた。
そして、今すぐにでも魔王軍の領地に────行きたいところだけど、魔王軍の領地はすぐに行けるような場所では無いため、僕とシャルはその道中にある街に泊まることにした。
◇魔王軍side◇
「ウェ……ウェンくんが魔王軍の領地に来るって言っていたわよ!?」
「そうですね……私は知りませんでしたが、魔王様はウェン様たちの目的地を知っているものだと思っていました」
「きっと、私が魔王としての仕事を行っている時に話していたことだと思うわ……それはそれとして────今すぐに!魔王軍全軍に指示を出すわ!」
「……魔王軍全軍に?」
魔王軍全軍に指示が出されるということは、それこそ戦いの時ぐらいなものだが、それが今出されたことに赤髪の側近は少し困惑した。
そして────魔王は、大きな声で言った。
「ウェンくんと出会ったら、これ以上無いほど丁重に扱ってあげて、私の印象をとても良くしておきなさい!!」
────赤髪の側近は、その指示に呆れを抱きながらも「承知しました」と答えた。
これでも魔王としての能力は高いため、それだけにそんな魔王の心をここまで動かしてしまうウェンとは一体どのような人物なのか、赤髪の側近は少し興味を抱いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます