第2話 魔物がよく出る街
旅に行くと言って足を進めると、夕暮れ時に僕たちが来たことのない街の入り口へと到着した。
来たことのない街だけど、僕たちは一つだけこの街についての情報を持っている。
それは────魔物がよく出る街、ということだ。
「うわっ、見てウェン!この街防衛体制すごいよ!」
「そうだね」
その街の入り口にはたくさんの兵士や、障害物、そして対空ようの道具なんかもたくさん置いてあった。
魔物がよく出る街というだけあって、魔物が出ることをかなり警戒しているんだろう。
僕たちは兵士の人にお目通してから街の中に入る……魔物がよく出る街ということで、いくら防衛体制が敷かれていると言っても危険なはずだ。
なら、どうして僕たちがそんな危険とも思える場所にやって来たのか……それは────
「……ここなら、ウェンがどうして魔物に襲われるのかのヒントが得られるかもしれないね」
「うん……そうなってくれると良いね」
今シャルの言った通り、僕がどうして魔物に襲われるかの理由を探るためだ。
魔物がたくさん出現する場所には、きっと何か理由があるはず……そして、もしかしたら僕が狙われている理由もそこにヒントがあるのかもしれないし、運が良ければ僕のことを襲って来ている存在に直接会うことができるかもしれない。
そう考えて、僕たちは僕たちの故郷から一番近くにあった、この魔物がよく出る街を旅の最初の目的地と定めた。
そんな危険な街で、しかも魔物によっては活発化する夜に近い時間帯だから、人は少ない……と思っていたけど────
「いらっしゃいいらっしゃい!今日はこの野菜が格安だよ〜!」
「今日釣れた新鮮な魚があるんだ!良かったら買って行かないかい!?」
僕たちが街に入って少し歩くだけで屋台がたくさん見えて、そんな大きな声が飛び交っているほどに街は活気づいて居た。
「魔物がよく出るっていう割には、思ってるよりも元気な街じゃない?」
「そうだね」
魔物がよく出る街ということだから、てっきり暗いとまでは言わなかったとしても、少しは影があると思ったけど、街の中には全くその気配が無い。
それだけ、街の防衛体制が信頼されているということなんだろうか。
……様々な店で野菜や魚が売っていることから、少なくともこの街が生活に困っている街でないことはわかるため、宿泊地としては悪くないだろう。
僕が明るい街並みを見ながらつられて少し明るい気持ちになっていると、宿らしき建物が見えて来たので、僕とシャルはそこへ入る。
そして、そこへ入るとそこの大家さんと思われる女性に話しかけられた。
「おや、もしかして泊まりに来たのかい?」
「はい、そうですけど……何か不都合でしたか?」
大谷さんの表情が少し困ったような表情だったため僕がそう聞くと、大家さんは言った。
「不都合ってわけじゃ無いんだがね?今は一部屋しか空いてないから、二人で一部屋になるけどそれでも大丈夫かい?」
そう言われた僕は、シャルと顔を見合わせて、そのことについて話し合うことにした。
◇魔王軍side◇
「おや、もしかして泊まりに来たのかい?」
「はい、そうですけど……何か不都合でしたか?」
「不都合ってわけじゃ無いんだがね?今は一部屋しか空いてないから、二人で一部屋になるけどそれでも大丈夫かい?」
その会話を聞いている者が、ウェンとシャル、そして宿の大家以外にも二人居た。
────魔王とその側近である。
「二人一部屋……?」
そして、それを聞いてそう声を上げたのは、色白で艶のある長い白髪をした、美貌ある魔王だった。
そして、続けて大声で言う。
「ダ、ダメよウェンくん!今すぐに断って!!」
「まぁまぁ、魔王様が何を言ったところで彼には聞こえませんから」
どこか大人びた雰囲気でそう言ったのは、魔王の側近の一人。
明るめの赤髪を一括りにしていて、何かの手違いでその大きな胸が露出してもおかしく無いと思わせるほどに体を露出させている人物。
「うるさいわね!わかってるわよそんなこと!」
側近に言われなくてもわかっていることを言われた魔王は、苛立った様子でそう言った。
そんな魔王の態度に心を動かすことなく、普段通どこか大人びた、そしてゆったりとした声音で言った。
「同じ部屋で共に過ごすことが、それほどまでに感情を動かされるようなことなのでしょうか?」
「ウェンくんは、賢くて相手の気持ちを思いやることのできる子だけど、人間の十五歳……あなたみたいな基準で考えないで欲しいわ」
「それはそれは、失礼いたしました」
小さく笑いながらそう謝罪する側近に、魔王は先ほどまでとは違う、声を聞くだけで魔王を想起させる冷たい声で言った。
「……準備しておきなさい」
「何のでしょうか?」
「場合によっては────魔王軍の戦力を使って、あの街を滅ぼすことになるわ……だから、その準備よ」
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