第42話 将来

 ご飯の一口目に口を付けると、ネルミアーラさんは言った。


「……美味しいわね」

「口に合わなかったらどうしようって思ってましたけど、合ったみたいで良かったです!」


 そう言いながら、僕もご飯に口を付ける。


「この料理は、ウェンくんが作ったの?」

「いえ、お母さんが作ってくれたものです!」

「そう……いつも、そんなに美味しそうに食べているの?」

「え?」

「顔に今食べているご飯が美味しいと書いているわよ」

「え、え!?」


 僕は、咄嗟に自分の顔を両手で触るけど、書いているだけだからか普段と手触りが全く変わらない。

 僕がそのことに動揺していると、ネルミアーラさんが小さく微笑んで言った。


「冗談よ、ウェンくんは可愛いわね」

「っ……!」


 僕は急激に恥ずかしくなって、少し慌て気味にご飯を口に入れる。

 それからしばらくの間二人でご飯を食べていると、ネルミアーラさんが言った。


「大抵の人間の子供……いえ、人間は、私のことを見たら怖がるものだけれど、ウェンくんはそうじゃないのね……今は私の魔力が切れていて、魔人特有の魔力を発していないからかしら」


 悲しそうな表情でそう言うネルミアーラさんに、僕は言う。


「人間とか魔人とか魔力とか関係ありません!僕がネルミアーラさんのことを怖がったりするわけないじゃないですか!」

「……」


 ご飯を食べ終えたネルミアーラさんは、立ち上がって言った。


「ウェンくん、また明日同じ時間にこの場所で会いましょう?その時には、私の魔力も回復していると思うから……その時に、もう一度今と同じ言葉を聞かせてほしいわ」

「はい!」


 そして、それだけを言い残すと、ネルミアーラさんはこの場を去って行った……もう少なくとも歩けるぐらいには回復したネルミアーラさんの背中を見届けた後、僕は家に帰り、明日を楽しみにしながら眠りについた……ネルミアーラさんは何か心配しているみたいだけど、僕は絶対にネルミアーラさんがどんな魔力を放ったって、ネルミアーラさんがネルミアーラさんである以上、僕は絶対に今日と変わらずネルミアーラさんと楽しく過ごす!

 そう思い眠り────次の日。

 僕は昨日ネルミアーラさんと約束した通り、昨日とネルミアーラさんと過ごしたのと同じ時間、同じ場所に向かった。

 すると────


「ウェンくん、来てくれたのね」


 そこには、とんでもない量の魔力を放っているネルミアーラさんが居た。

 僕はまだ弱い魔力を普段使いすることぐらいしかできないけど、それに比べてネルミアーラさんの魔力は本当に凄い。


「……ウェンくん、今でも昨日と同じ言葉────」

「すごい魔力量ですね!とても感動しました!」

「……え?」


 僕がそう言うと、ネルミアーラさんは困惑した様子だったけど、僕はそんなネルミアーラさんに近づいて言う。


「大人の人でもこんなに魔力がある人見たことありません!そんなに魔力があったら、大きな炎とかも出せるんですか?」

「えぇ、出せるわよ」

「っ……!かっこいいですね!」

「か、かっこよくなんて無いわ」

「いえ!本当にかっこいいです!」

「……」


 ネルミアーラさんは、少し照れた様子で僕から顔を逸らしたけど、僕はその後もネルミアーラさんのことを褒め続けた。

 そして、ネルミアーラさんは一度魔力を抑えると、僕と一緒にその場に座って言った。


「ウェンくん……将来は、私がウェンくんに料理を振舞ってあげましょうか?」

「え?良いんですか?」

「えぇ、今はまだ料理経験が無いけれど……いつか、ウェンくんのお嫁さんになれるよう努力するわ」

「ネルミアーラさんの料理……とても楽しみで────お、お嫁さん!?」


 僕がその言葉に驚くと、魔王さんは言った。


「今決めたのよ……私は将来、ウェンくんのお嫁さんになる」

「ネルミアーラさん……えっと、その……お、お嫁さん……って言うのは恥ずかしいですけど、その……僕も、ネルミアーラさんの作ってくれた料理を食べたり、もっともっとネルミアーラさんとたくさん時間を過ごしたいです!」

「……ウェンく────」

「強力な魔力反応を放った魔人を発見!これより討伐に移る!」

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