第41話 十年前
────十年前。
僕は、家の近くにある山に一人で来ていた。
特に何か目的があるわけじゃ無いけど、何か綺麗な花でも見つけられたら気分が上がる。
そんな感じでなんとなく山の中を歩いていると────僕は、ある存在を見て思わず足を止めた。
「……」
色白で艶のある長い白髪に、とても綺麗な水色の瞳……そして、とても綺麗な顔立ちに透明感のある白い肌の少女……体の大きさは僕と同じぐらいだから、年齢も僕と同じぐらいなのかな。
この世のものとは思えないほど綺麗な人で、山の木々たちもそう思っているのか、他の部分は影を作っているのにその人の部分だけには光が差し込んでいる。
僕が思わずその人に見惚れていると、その人が話しかけてきた。
「そこを離れなさい、人間……今の無様な私を見るんじゃないわ」
「ぶ、無様だなんて……僕は、とても綺麗だと思いますよ」
僕がそう言うと、その人は少し間を空けてから言った。
「……私は魔人よ、人間が魔神のことを褒めるのはやめておいた方がいいわ」
今まで見たことも無いほど綺麗な人だったけど、魔人の人だったんだ……でも。
「そんなの関係無いです!僕が綺麗だと思っただけなので!それより、僕魔人さんと会うの初めてです!少しお話しませんか?」
「人間なのに魔人の私に対して全く恐れないなんて、変わっているわね……私は今、少し魔力の制御を失ってしまってこの山に落ちてしまったことと、純粋な魔力切れのせいで動けないからこの場で体を休めているの、だからあなたが話したいのなら好きにしなさい」
「ありがとうございます!でも、結構大変な状況だったみたいですね……少し待っててください!僕、食べ物とか飲み物とか持ってきます!」
「私はそんなことお願いして────」
僕は、大変な状態らしい魔人さんのために、一度家に帰って食べ物と飲み物を取りに帰ると、再度魔人さんの居る場所に向かった。
すると、そこにはさっきの位置から全く動いていない魔人さんが居た。
「……本当に持ってきてくれたのね」
「はい!これ、好きなだけ食べてください!」
そう言って僕が食べ物と飲み物を魔人さんに渡すと、魔人さんは少し僕の顔を見てから言った。
「……本当に食べても良いの?」
「はい!もちろんです!」
僕がそう言うと、魔人さんはそれらに口を付け始めた。
「……美味しいわね」
「もしかしたら魔人さんだと僕とは味の感じ方が違うかもしれないと思ってたんですけど、美味しいと思ってくれて良かったです!」
「……その魔人さんと呼ぶの、やめてくれるかしら」
「え……?」
魔人さんと呼ぶのを、やめる……?
「えっと……でも、どう呼べば────」
「ネルミアーラ────私の名前よ」
その名前を聞いた僕は、口に出してその名前を呟く。
「ネルミアーラさん……わかりました!これからは、ネルミアーラさんって呼びますね!」
「えぇ……あなたの名前は?」
そう聞かれた僕は、自分の名前をネルミアーラさんに伝える。
「ウェンです!」
「ウェン……ウェンくんね……わかったわ、ならウェンくん、一ついいかしら」
「なんですか?」
僕は何を言われるのかなと思いながらそう聞くと、ネルミアーラさんは目の前にあるたくさんの食べ物や飲み物を見ながら言った。
「ウェンくんはこんなにたくさん食べ物と飲み物を持ってきてくれたけれど、私一人じゃこんなにも食べ切れないわ────だから、二人で食べましょう?」
二人で────一緒に美味しい物を食べながら、楽しい話ができるかも!
僕は、そう考えるだけでとても楽しい気分になって、そんな気分が声にも表れているような声音で言った。
「っ……!はい!」
その後、木々に囲まれた山の中、僕とネルミアーラさんは二人で一緒にご飯を食べた。
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