第18話 魔王の側近

◇ウェンside◇

「ここが、魔王軍の領地……」


 僕は、いよいよ足を踏み入れた魔王軍の領地を見渡しながらそう呟いた。

 魔王軍の領地は、思ったよりも怖い雰囲気や禍々しい雰囲気ではなく、一見すれば綺麗な街並みのようにも思えた。

 ……だけど、やっぱり数多くの魔物の気配を感じるから、そこだけは人の住んでいる綺麗な街と同じとは言えない。


「ウェン、ここからはいつ魔物が出てきてウェンのことを狙ってきてもおかしくないから、絶対に私から離れたらダメだよ!」

「うん、ありがとう、シャル」


 そんな会話をした後、僕とシャルはその魔王軍の領地へ足を進めた。

 ……僕が魔物に狙われることと魔王軍に関連があるのかを直接聞き出すにしても、魔物の多くは人と意思疎通を図ることが難しいから、できたら魔物の進化した存在、もしくは元からの能力値が高く人との意思疎通も行うことのできる魔人を見つけることが出来ればとてもスムーズにことが進むはずだ。

 と言っても、魔人なんて今まで会ったこともないし、たくさん居る魔物に比べればかなり限られた数しか居ないため、会うことはかなり難しいだろう。

 それでも、この魔王軍の領地なら────


「っ……!」


 僕がそう考えた直後、後ろからとても強力な魔力を感じたため、僕は思わず後ろに振り返った。

 ……強力な魔力を感じたのは僕だけではなくシャルも同じだったのか、シャルも僕と同じように後ろへ振り返っていた。

 そして、その視界の先には────赤髪で赤の目をした色白の女性が居て、その女性は赤の服を着ていた……けど、その服は、胸元の部分に穴が空いているためその大きな胸はとても露出していて、両肩は空いており、足の部分は一枚の布だけなため、その長い足もとても露出されていて、もし何かの間違いでめくれたりしたら大変なことになりそうだ。

 というか────とても刺激的な格好だ……!

 僕がそう思っていると、僕の隣に居るシャルが自分の手で僕の目を覆うようにしながら言った。


「ウェン!ウェンはあの女のこと見たらダメ────」

「お初にお目にかかります、ウェン様にシャルさん……私は、魔王様の側近であるローズと申します」

「えっ……!?」

「魔王の……側近!?」


 確かに、強力な魔力を感じるから魔王の側近と言われても不思議はない……けど、まさかいきなりそんな人物と出会うことができるなんて。

 僕がそう驚いていると、シャルがローズさんに向けて言った。


「その魔王の側近が、私とウェンに何の用!?」

「そうご警戒なさらないでください、私はただお二人のことをもてなしに来ただけなのです」

「僕たちのことを、もてなしに……?」

「はい」


 シャルに目を覆われているから顔は見えないけど、ローズさんは優しい声音でそう返事をしてくれた。

 ……どういうことだ?どうして、魔王の側近のローズさんが、僕たちのことをもてなしてくれるんだ?

 僕がそのことに疑問を抱いていると、シャルが大きな声で言った。


「ウェン!騙されたらダメだよ!この女は、私たちのことを騙して私たちを倒す気なんだから!」

「まぁ、本当にそのようなつもりは────」


 ローズさんが何かを言いかけたかと思えば、僕の隣に居るシャルから強力な魔力反応を感じた────そして、その魔力……魔法を、ローズさんの方に向けて放った。


「突然ですね」

「……ウェン、ちょっと目瞑っててくれる?この女は、私が倒すから」

「え、え……!?シャル、わざわざ戦わなくてももしかしたら……ううん、それに、戦うなら僕も────」

「こんな女のことをウェンの視界に入れたくないの!それに、戦って弱らせた方が情報も引き出しやすいでしょ!わかったらウェンは目瞑ってて!!」


 ……こうなったシャルのことを止めるのは難しいため、僕は頷いて言った。


「わかったよ……でも、危なくなったら僕のことを呼ぶって約束してね?」


 それから、少し間を空けてシャルは言った。


「危なくなんてならないと思うけど……その時は、ちゃんとウェンのこと頼るよ」

「……それなら」


 僕は、その言葉を聞いて安心すると、僕は目を瞑ってローズさんのことは一度シャルに任せることにした。



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