第17話 魔王軍の領地
◇ウェンside◇
────あれから数日後。
僕とシャルは、ようやく魔王軍の領地の近くまで来ていた。
「シャル、この先に進むと魔王軍の配下の人たちが居ると思うから、慎重にね」
「うん!どんな奴が現れても、私が全員倒してあげるから、ウェンは大船に乗ったつもりで私に任せて!」
当然、シャルに任せるだけじゃなくて僕もシャルと一緒に戦うけど……
「うん、シャルのことはとても頼りにしてるよ」
僕がそう言うと、シャルは明るい表情で言った。
「ウェン……!私も、ウェンのことすっごく頼りにしてるからね!」
「ありがとう、シャル」
そう感謝を伝えると、シャルは笑顔になった……本当に、僕はシャルがずっと近くに居てくれて、幸せ者だ。
そのことを改めて実感しながら、シャルと一緒に魔王軍の領地へ向けて足を進めると────その景色が見えてきた。
◇魔王軍side◇
「まさか、ウェンくんの方からわざわざ私たち魔王軍のところに来てくれるなんて……もう運命なんじゃ無いかしら!?」
ウェンとシャルが魔王軍の領地に近づいて来ているのを見ながら魔王がそんなことを言っていると、赤髪の側近は少し間を空けてから言った。
「……少し気になっていたことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「何?私のウェンくんの運命についての話かしら?良いわ、ウェンくんが私の元へ来るまでの間そのことを聞かせてあげ────」
楽しそうな表情でそう語り出そうとした魔王に対し、赤髪の側近は落ち着いた声音で言った。
「いえ、その話はもう過去に何度もお聞きしていますので、お聞かせくださらなくて結構です」
楽しいという感情を抱いていた魔王は、そう言われて少し落ち込んだのか沈黙したが、赤髪の側近はそんな魔王の様子を気にすることなく続ける。
「私が気になっていることというのは、今ウェン様が向かおうとしている場所のことです」
落ち込んではいるものの、その赤髪の側近の言葉に思うことがあったらしい魔王は言った。
「ウェンくんが向かおうとしてるのは魔王軍の領地だってことはわかってるでしょ?今更何が気になってるの?」
「はい、そのことは当然理解しています────が……問題は、ウェン様の向かっている場所が私の領地に当たる場所だということです」
「……え?」
そう言われた魔王は、改めてウェンの居る場所を確認した────そして、慌てた声音で言う。
「ほ、本当じゃない!ウェンくんが今見つけた魔王軍の領地は、あなたの領地だわ!」
「そうなのです……ですから、私はもしウェン様が私の領地に入られた場合、ご挨拶に行かねばなりません」
赤髪の側近がそう言った時、魔王は大きな声で言った。
「ま、待ちなさい!あなたをウェンくんと会わせるわけには────」
「私の領地の問題ですので、どうかお許しください……ですが、この話はあくまでもウェン様が私の領地へ入ってこられた場合の話であり、もし何かの理由で私の領地へ入ってこなければ、この話は意味をなさなくなります」
「そ、そう……なら────ウェンくん!お願いだからそこから離れて!!」
と、ウェンには聞こえないが大きな声でそう願った魔王の願いは────ウェンとシャルがその領地に入ったことで潰えてしまった。
そして、赤髪の側近は魔王に対して微笑んで言う。
「では、魔王様……私は一足先に、ウェン様へご挨拶をさせていただきます」
「待ちなさ────」
再度、魔王が大声で赤髪の側近のことを引き止めようとするのも虚しく、そしてその願いが叶うことはなく、赤髪の側近は魔王の傍から姿を消してしまった。
「さて……いよいよ、ウェン様とのご対面ですね」
赤髪の側近は、楽しみで思わず口角を上げながらウェンとシャルの元へ向かった。
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