第28話 間違い
◇シャルside◇
「突然このようなことをお伝えしても理解に苦しまれるかと思いますが、魔王様は本当にウェン様のことを想っているのです」
魔王が……ウェンを、想ってる?
「意味、わかんないんだけど……じゃあ、もしかしてさっき言ってた魔王がウェンに伝えたいことって……」
「はい……いわゆる、告白というものです」
「っ……!」
ウェンが……告白される?
あの魔王に?ウェンのことを十年も魔物に狙わせ続けて来たやつに?
「……」
私は、今の感情を表現するように今までよりもさらに強力な魔法をこの女に向けて放った。
この女は、その魔法に先ほどまでよりも強力な魔法をぶつけることで対処してきた。
「突然荒々しくなりましたね……荒々しい魔法とは反対に、目や表情はとてもお暗くなっているようですが」
……ウェンは────
「ウェンのことは、絶対に誰にも渡さない」
◇ウェンside◇
今まで困惑とか驚愕とかを超えた何かの状態だったけど、一周回ってまた困惑と驚愕の感情が蘇ってきた。
でも、確実に言えることは────僕は魔王さんとは会っていないということだ。
魔王さんのように雰囲気から魔力まで特徴的な人と会ったことがあるなら、僕がそのことを忘れるわけがないし、容姿で言っても魔王さんのような美貌を体現したような容姿の人を忘れるはずがない……けど、可能性があるとすれば。
「魔王さんは、どこかのタイミングで魔力や容姿に特徴的な変化が現れたりしましたか?」
そう、もし魔力と容姿が成長段階や変異的なことによって変わったのだとすれば、仮に僕が過去に魔王様と会っていたとしても、その過去に会った人物と今目の前に居る魔王様が同一人物だとわかっていないだけということになる。
それならもしかしたら僕が魔王様と過去に会ったことがあるという話にも頷ける可能性が出てくる。
と思ったけど────
「前にウェンくんと会った時はその時のウェンくんと同じぐらいに幼かったから、そういう意味では成長して変わったかもしれないけれど、それを抜きにすれば特徴的な変化というのは起きていないわ」
「……そうですか」
もし変異的なことが起きていないのだとすれば、断言することができる。
「僕は、魔王さんと会ったことはありません」
自分の記憶に絶対の自信があるとは言えないし、十年前の記憶なんて思い出せるのはきっと本当に記憶に残っているところだけだと思うけど────やっぱり、いくら幼かったと言っても今目の前に居る魔王さんと過去に会ったことがあるなら、そんな衝撃的なことを忘れるはずがない。
僕は、さらに続けて言う。
「魔王さんの人間違いか、もしくは何かの勘違いだと思います」
これだけハッキリと言えば、魔王さんも納得してくれるかな。
そう思っていた僕に対して、魔王さんは言った。
「いいえ、私が大好きなのはウェンくんで間違いないわ」
「十年もの間僕のことを魔物に狙わせ続けてきて、それが間違いだったなんて認めたくない事実だと思いますけど、それが事実です……この十年の間、僕はシャルの協力も相まって今こうして無事に生きることができています……だから、僕は魔王さんに恨みなんて抱いて無いですし、魔王さんがそれを間違いだったと認めてくれて、今後は僕に干渉しないと約束してくださるのであれば僕もこれ以上魔王さんに干渉しません」
僕は、お互いにとって最善のことと思われることを口にした。
すると────魔王さんは、一度間を空けてから少し悲しそうな表情をして言った。
「もしかして、再会したら……なんて思っていたけれど、甘い見通しだったわね、自分に呆れるわ」
そう言うと、魔王さんは続けて口を開いて言う。
「本当なら、このことはウェンくんのことを不安にさせてしまう可能性があるから言いたく無かったわ……けれど、このことを言わないと話が進まないようね」
魔王さんが一体何のことを言っているのかわからずに、僕が魔王さんの次の言葉に耳を傾けると、魔王さんは少し間を空けてから言った。
「ウェンくんは────十年前、私と会った直後に人間の手によって、私と会った記憶を封印されているのよ」
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