第27話 愛の告白

◇シャルside◇

 私は、この私とウェンの間に土魔法で障害物を作った忌々しい女と魔王を放ちあってその魔法を衝突させ合いながら言う。


「ちょっと!今はこんな遊びに付き合ってる暇無いんだけど!」

「ご安心ください、私はただ魔王様とウェン様がお二人になれる時間を作らせていただくだけですので」

「そんなことさせないけど、時間を作って魔王はウェンのことをどうするつもりなの?」


 ウェンの命に危害が及ぶようなことをする、または危害を加える、もしくは洗脳……考えられるのはこの辺りだけど、そんなこと絶対にさせない!

 私が心の中で強くそう叫ぶと、この女は言った。


「シャルさんが考えているようなことで無いことだけは確かです……魔王様は、ただウェン様に伝えたいことがあるだけだと思いますので」

「ウェンに……伝えたいこと?」

「はい────最も、その後で、シャルさんにとってはあまり好ましくないようなことを、魔王様がウェン様にする可能性は否定できません」


 魔王がウェンに伝えたいこととか、正直どんなことなのか全然想像できないし意味もわからないけど────


「それを伝えた後で私にとって好ましくないことをするって、ウェンに危害を加えるってこと?」

「危害、と言いますか……魔王様も今頃ウェン様に伝えたいことをお伝えしているところでしょうから、私がここで魔王様がウェン様に伝えたいことをシャルさんに伝えてしまっても問題は無いでしょう」


 そう言うと、この女は一度私から距離を取って魔法を放つのをやめた。

 本当なら今すぐにでも魔法を放ちたいところだけど、魔王がウェンに伝えたいことっていうのは私にとって知っておいた方が良い重要な情報になるから、私も一度同じように魔法を放つのをやめる……すると、この女は口を開いて言った。


「魔王様────ウェン様のことを愛しているのです」

「……は?」



◇ウェンside◇

「ぼ、僕を……え?」

「聞こえなかったなら何度でも言ってあげる……私は、ウェンくんのことを愛しているのよ」

「……」


 魔王から予想外なんていう言葉すら表現として物足りないような言葉が飛んできた僕は、困惑や疑問といったものすらも超えた何かの状態になっていた。

 僕の聞き間違いでなければ、今魔王は僕のことを大好きって……何なら、魔王を目の前にして緊張状態にあって聞き間違いをしてしまったという方がまだ驚きの少ない話だ。

 でも……今正面から抱きしめられていることと考えても、さっきの言葉が聞き間違いだとは思えない。

 僕が現状に全く頭が追いついていないでいると、僕のことを正面から抱きしめている魔王が言った。


「はぁ、ウェンくん……本当に、やっと会えたわ……ウェンくんのことは、もう絶対に離さない……」


 そう言って、魔王は僕のことを抱きしめる力を強めた。

 魔王に抱きしめられたということが衝撃でさっきまで感じなかったけど、魔王が僕のことを抱きしめている抱きしめ方がとても優しい……というか────


「あ、あの、一度僕のことを狙って来たとか魔王とか、そういうのは置いておくとしても、初対面の女性に突然抱きしめられるというのは……」


 僕がそう言うと、魔王は少し間を空けてから言った。


「もしかして、照れているのかしら?」

「て、照れてるとかじゃないです!」

「もう〜!照れなくても良いのよ?私はウェンくんと会うために、これまでずっと生きて来たんだから」


 ……僕に会うために、生きてきた?


「話が見えないんですけど、どうして魔王……さんは、僕のことを知ってくれていたんですか?」


 僕が純粋な疑問を投げかけると、魔王さんは僕のことを優しく抱きしめながら僕と目を合わせてどこか悲しそうな表情で言った。


「それは────私が十年前に、ウェンくんと会っているからよ」


 ……え?

 僕が十年前に、魔王さんと会っている……?

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