第9話 洞窟

 門の外に出ていざ街の外へ歩き出そうとした時────門兵の人が話しかけてきた。


「君たち!!」


 僕とシャルはその声を聞いて足を止めると、その門兵の人が頭を下げてくれて言った。


「昨日は本当にありがとう!君たちが居なかったら、大変なことになっていたかもしれない!」

「いえ、こちらこそ宴会などを開いてくださって楽しい時間を過ごさせていただけたことに感謝しかありません」

「こちらこそ、楽しい宴会を開いていただいて、とても楽しい時間を過ごさせていただけたので、そのことに感謝しかありません!」

「うんうん!まぁ私たちからすればあんなの本当に大したことないから、本当にただただ楽しい時間過ごさせてもらったって感じ!」


 僕たちがそう伝えると、門兵の人は口角を上げて優しい表情で言った。


「もし何か困ったことがあれば、またこの街を訪ねてください、私も含めきっと街の人たちもあなた方のことを歓迎してくださるはずです」

「わかりました!」


 その会話を最後に、改めて街から出て歩き出した僕とシャルは、次の目的地へ向けて歩き出した。

 そして、シャルがどこか嬉しそうな表情で言う。


「……今回の街では、どうしてウェンが魔物に狙われちゃうのかの手がかりは掴めなかったけど、楽しかったね!」

「うん、旅の目的には近づけなかったけど、楽しい思い出が増えたことが僕は嬉しいよ」


 ────僕がどうして魔物に狙われてしまうのかを探るための旅をするにあたって、僕とシャルはどこに行くのかを三箇所だけ決めていた。

 一番最初は、僕たちの居るところから近かった魔物がよく出る街、そして次は────


「今回の魔物がよく出る街では、ウェンがどうして魔物に狙われるのかの手がかりは掴めなかったけど────次の洞窟では、絶対に掴んでみせるよ!!」


 僕が次の目的地について考えていると、シャルも同じことを考えていたようで元気にそう言った。


「うん、そうだね」


 僕はそれに頷いてそう返事をする。

 そう、次に向かうのは魔物の巣窟である洞窟。

 今までは学生という立場もあって、草原や森で魔物と戦うことはあっても、草原や森と比べて危険度の高い洞窟に入らせてもらえたことはなかったため、もともと魔物のたくさん居るこの洞窟でなら、今まで得られなかった手がかりが何か得られるかもしれない、ということだ。


「洞窟はここから一時間歩いた辺りにあるみたいだから、僕とシャルが話してたらすぐだね」

「うん!」


 その後、僕たちが楽しく雑談を交えながら歩いていると────本当にあっという間に洞窟前に到着した。

 そして、今から洞窟に入るというときにシャルが言った。


「どんな魔物が出てきても私が瞬殺してあげるから、ウェンは私のこといっぱい頼っていいからね!」

「頼りにしてるよ、シャル」


 そして、炎魔法で道を照らしながら洞窟に入って少し経つと、いよいよ魔物の気配がした。


「私の前に姿を現したのが運の尽き!来るならいつでも来なさい!!私が倒してあげる!!」


 そう言ってシャルが構えると────僕たちの目の前には予測通り魔物が現れた。


「……えっ」

「……あ」


 魔物が目の前に現れると、さっきまでとてもやる気満々だったシャルは、突然顔を青ざめた。

 そして、僕はその魔物の姿を見て、次の瞬間に何が起きるのかが予測できてしまった。

 シャルがどうして顔を青ざめたのか、それはシャルにとって予想外のことが起きたからだ。

 ……シャルにとって予想外だったのは────その魔物が昆虫系の魔物だったこと。

 そして────シャルは、案の定僕の後ろに回ってくると、後ろから涙ながらに僕にしがみつきながら言った。


「ウェン!早く倒してお願い!ウェンも知ってると思うけど、私昆虫系だけはダメなの!!お願い!!ウェン!!早く!!」

「……はぁ」


 僕は先が思いやられると思いながらも、目の前の昆虫系の魔物を倒した。

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