第36話 気持ち
「ウェ、ウェンのことをどう思ってるって……どういう意味?」
「そのままの意味よ、ウェンくんのことをただの幼馴染として大事に思っているだけなのか、もしくは────それ以上の感情をウェンくんに抱いているのか、そのどちらなのかと聞いているのよ」
私が、ウェンのことを幼馴染として大事に思っているのか、それともそれ以上の感情を抱いているのか。
そんなこと────決まってる。
「私は……幼馴染じゃなくて、一人の男の子としてウェンが好き」
ハッキリとそう伝えると、魔王は間を空けずに言った。
「────でも、それをウェンくんに伝えることはできないのでしょう?」
「っ……!」
私の気持ちを、ウェンに伝える……元々は、魔王を倒して、ウェンが魔物に狙われ無くなるようになったら伝えようと思ってた。
今まで抱いてたけど、伝えられなかった、この気持ち……だけど、今は魔王は倒せてないけど、ウェンが魔物に狙われる理由は判明して、ウェンと魔王が会ったことでそれは一応解決したって言えるはず。
じゃあ、あとは私の────勇気次第。
「ウェンくんに好きだと伝えることにすら恥ずかしさ、もしくは最悪の場合を想定して恐怖してしまうのなら、ハッキリ言って私とあなたではウェンくんへの愛の大きさが違うわ……これを通して何を言いたいかわかるかしら────私の邪魔をしないで、と言いたいのよ……そんな半端な想いで、私のウェンくんへのこの気持ちが成就するのを邪魔して欲しくないわ」
「……半端?」
「えぇ、そうよ」
私が……半端?
ずっと幼馴染としてウェンの隣に居て、密かにずっとウェンのことを一人の男の子として好きな気持ちを抱いてきた私が────半端?
「……ふざけないで」
「小さくて聞こえなかったは、何か言ったかしら?」
私は、大きく口を開いて大きな声で言う。
「ふざけないでって言ったの!!私の方がウェンのこと大好きだから!!」
「冗談でしょう?私の方がウェンくんのことを大好きに決まっているじゃない」
もう、私はウェンのことを大好きだってことに恥ずかしさを抱いたりなんてしない!
この後すぐにでも、ウェンに私の気持ちを伝える!!
けど────やっぱり、この魔王だけは……!!
「だったら、今のうちにどっちがウェンへの気持ちが強いのか、魔法で勝負して決める?」
私がそう言うと、魔王は小さく笑いながら言った。
「私はそれでも良いけれど、あなたもしかして私に勝てる気で居るのかしら?」
「ウェンへの気持ちで私が負けるわけないんだから、勝つに決まってるでしょ!」
確かに魔王は強いと思うけど────ウェンへの気持ちを懸けた戦いなら、絶対に負けない!!
「面白いわね、ウェンくんにはあなたと戦わないようにとお願いされているけれど、これはあなたから挑んできたことよ、覚悟なさい」
「望むところだから!!」
私と魔王はお互いに体から魔力を放って、いつでも魔法を放てる体勢に入った。
そして、お互いに手をかざし合って魔法を放とうとしたところで────
「シャルと魔王さん!僕の方はお風呂に入れる準備終わりました!」
脱衣所の反対側から、今の私たちの雰囲気には場違いなほど明るいウェンの声が聞こえてきた。
私と魔王は、すぐに魔力を抑えると、ウェンに向けて言う。
「わ、わかった〜!後ちょっとで行くね〜!」
「え、えぇ、もう少しだけ待っていてくれるかしら」
「わかりました!」
そんなウェンの声を聞き届けると、私と魔王は目を合わせる。
「……ウェンのこと長く待たせるわけにもいかないから、一時休戦しない?」
「そうするしかなさそうね」
そういうことで、私と魔王は一時休戦することになった────けど。
「私が先にウェンのところに行く!!」
そう言うと、私は服を脱ぐスピードを早めた。
「そんなことさせるはずがないでしょう?」
そして、それに呼応する形で魔王も服を脱ぐスピードを早め、私と魔王は同時に服を脱いで体にバスタオルを巻き終えると、競うようにしながらウェンの元へ向かった。
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