第35話 半端
「私がウェンくんに、シャルローネを攻撃しないようにお願いされたことを良いことに、私のことをウェンくんから引き離してウェンくんのことを抱きしめるなんて……絶対に許さないわ」
とんでもない魔力だ……もしあの魔力を使って、魔王さんが魔法を放ってきたりしたら────
「ま、魔王さん!落ち着いて────」
僕が魔王さんのことを落ち着けようとするも、魔王さんは強力な魔力を放ちながら僕とシャルの方に近づいてくる。
ま、まずい……!
「シャ、シャル……!魔王さんが怒ってるみたいだから、一度僕から離れてくれないかな?」
「嫌!やっとウェンがこうして目の前に居るのに、話すなんて絶対嫌!!」
本当にどうしよう……何かこの状況で有効な魔法────なんて考える間もないぐらい、魔王さんが近づいてきてる!
僕は、結局有効な手段を思いつかずに居ると、魔王さんは僕とシャルの近くまでやって来た。
そして────強力な魔力を無くすと、その直後に僕のことを後ろから抱きしめてきて、それと同時に僕のことをシャルから引き離すために後ろに引っ張るように力を加えながら言った。
「私のウェンくんから離れなさい!今から私はウェンくんと二人でお風呂を楽しむのよ!!」
そう大きな声で言う魔王さんに対し、シャルは僕のことを正面から抱きしめたまま魔王さんと同じぐらい大きな声で言う。
「私がウェンと二人で一緒にお風呂に入るの!!魔王はどこか行って!!」
────思っていた方向とは別の方向で物騒な雰囲気になってる……けど。
「シャルはどうしてそんなに僕と一緒にお風呂に入りたいの?今までそんなこと言ってなかったのに」
「へ、へっ!?そ、それは……」
僕が疑問に思ったことをシャルに聞いてみると、シャルは頬を赤くした────そして、顔を隠すように僕の体に自らの顔を埋める。
すると、僕の後ろから僕のことを抱きしめて、かつ僕のことをシャルから引き離そうとしている魔王さんが言った。
「いい加減、そんな半端な気持ちなんだったらウェンくんから離れなさい!ウェンくんとのお風呂は、私がちゃんと楽しんであげるわ!!」
「っ……!ふざけないで!!私だってウェンのこと大事に────」
その後、二人はまたも言い合いを開始した。
このままだと本当に埒が明かなそうだ。
というか、僕はそもそもシャルとも魔王さんともお風呂に入るなんて言っていないし、魔王さんと、そしていくら幼馴染とは言っても異性と一緒にお風呂に入るなんてちょっと恥ずかしい……けど────今目の前で繰り広げられている言い合いの迫力を見たら、とてもじゃないけどそんなことは言えそうもない……なら。
「じゃ、じゃあ、提案なんですけど、三人で一緒に入りませんか?」
「……三人で」
「……一緒に?」
僕が、二人の要望を叶えられることを提案すると、二人は少し沈黙してから言った。
「まぁ、それでウェンと一緒にお風呂に入れてウェンと魔王のことを二人にしなくて済むなら……」
「それでウェンくんと一緒にお風呂に入れて、ウェンくんとシャルローネのことを二人にしなくて済むなら……」
二人は同じような理由でそれを快諾してくれると、僕、シャルと魔王さんで分かれて別々に服を脱いでお風呂に入ることとなった。
────異性と一緒にお風呂に入るのは、シャルと小さな時に一緒にお風呂に入った時以来のため、僕は少し緊張感を抱いていた。
◇シャルside◇
私と魔王が、二人で隣り合わせに服を脱いでいると、魔王が私に話しかけて来た。
「シャルローネ、一つ良いかしら」
私は、さっき転移魔法によってウェンと引き離されたことにまだ少し苛立ちを覚えていたことに加え、ウェンと二人でお風呂に入ろうとしていたことに対しても苛立ちを考えていたため、声音に少し怒りを含めて言う。
「何?もしウェンと二人でお風呂に入りたいとか言い出すなら────」
「当然その願望はあるけれど、ウェンくんの提案を受け入れた時点で少なくとも今はその願望に執着するつもりは無いわ」
「……だったら何?」
私がそう聞くと、魔王は言った。
「あなた────ウェンくんのことをどう思っているの?」
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