第37話 雰囲気
◇ウェンside◇
シャルと魔王さんが着替え終えるのをお風呂場の前で待っていると────
「お待たせ、ウェン!」
「待たせたわね、ウェンくん」
二人は一緒に僕のところまでやって来た。
僕は、すぐに二人の方を向いて言う。
「気にしないでくださ……い」
僕は、シャルと魔王さんが体にバスタオルを巻いている姿を見て、声を小さくしてしまった。
当たり前だけど、シャルの体が昔一緒にお風呂に入ってた時よりもとても大人びている……胸の大きさとか、体のラインとか。
魔王さんは魔王さんで、とても綺麗な体つきをしている。
というか、二人とも本当に顔立ちも綺麗で、容姿が全体的にとても整っている。
僕が、思わず二人のバスタオル姿に見惚れてしまっていると────照れた顔をしながらシャルが言った。
「ウェ、ウェン……そんなに見られると……」
「っ……!ご、ごめん!」
僕は、そう謝罪するとすぐにシャルから視線を逸らした。
「う、ううん!そ、そんなに気にしなくていいから!」
シャルがそう言ってくれた後で、魔王さんが言った。
「シャルローネ、何を勘違いしているのかしら」
「勘違いって、何が?」
魔王さんに話しかけられたシャルがそう聞くと、魔王さんは言った。
「ウェンくんは私に見惚れていたのであって、あなたになんて然程興味は無いわ、だからあなたが恥ずかしがる必要はどこにも無いのよ」
「は、はぁ!?そんなわけないでしょ!」
シャルは大きな声でそう言うと、続けて僕の方に駆け寄ってきて言った。
「ウェ、ウェン!違うよね?ウェンはあんな魔王なんかじゃなくて、私に見惚れてたんだよね?」
「え、え!?そ、それは、えっと……」
すると、次は魔王さんも僕の方に近づいてきて言った。
「ウェンくん、ハッキリと真実を言ってあげれば良いのよ、遠慮なんてする必要無いわ」
「え、えっと……僕は……」
どう言葉にすれば良いのかを迷いながらも、僕は二人に向けて言った。
「僕は、シャルのことも魔王さんのことも、とても綺麗だと思います」
「っ……!」
「っ……!」
すると、二人は目を見開いてそれぞれ何かを小さな声で呟き始めた。
「ウェ、ウェンが私のこと綺麗って……!バスタオル姿なんてちょっと恥ずかしかったけど、ウェンが綺麗って言ってくれたなら────」
「ウェンくんが私のことを綺麗と言ってくれたのなら、ウェンくんのことをお風呂に誘ったのは正解だったわね、はぁ、ウェンくん────」
二人とも、それぞれ自分一人で何かを呟いているみたいだったけど、同時に呟くのを辞め────シャルは僕の右手を、そして魔王さんは僕の左手を握って言った。
「ウェン!早く一緒にお風呂入ろ!」
「ウェンくん、一緒にお風呂に入りましょう?」
「は、はい!」
突然同時にそう言われた僕は、少し驚きながらもそう返事をして、二人と一緒にお風呂場に入った。
さっきまではどこか険悪な雰囲気なシャルと魔王さんだったけど、お風呂という場でならきっとリラックスして仲良く過ごせるはずだ。
────と思った僕だったけど、お風呂場に入って早々、シャルが魔王さんに言った。
「ちょっと!ウェンの左手握らないで!」
「私のセリフよ、どうして勝手にウェンくんの右手を握っているのかしら?」
「ウェンの右手を握るのに魔王の許可なんて必要ないから!」
「ウェンくんは私のウェンくんなのだから必要に決まっているでしょう?」
「だから────」
二人はまたも何か言い合いを始めてしまった。
……シャルも魔王さんも、僕と二人で話している時は普通に話してくれるのに、どうして三人になると突然こんな雰囲気になってしまうんだろう。
魔王さんは、僕はわからなくてもいいことって言ってたけど、僕はやっぱりそれをわからないといけないんだと思う。
このお風呂場で三人で過ごす時間の中で、僕はどうしてこんな雰囲気になってしまうのかを探ってみることにした。
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