第54話 幸せ
────翌日。
シャルの家が雇っている建築を生業としている人たち、そしてネルミアーラさんが魔王軍の人たちに働きかけ、建築能力の高いと思われる人たちが人類の敷地と魔王軍の領地の狭間に集結した。
その場には僕とシャル、ネルミアーラさんにローズさんも居る。
そして、ネルミアーラさんがその人たちへ向けて話し始めた。
「事前に説明を受けてこの場に居ると思うけれど、私はもう人類に対して侵略行為、または攻撃を行う理由が無いからそれをやめるわ……そして、今からあなたたちにしてもらうことは、私がウェンくんと幸せになりたいという願いのために必要不可欠なことよ……シャルローネが連れてきた人間たちは私の願いなんてどうでも良いことでしょうけれど、当然今言ったのはここにあなたたちをこの場に呼んだシャルローネの願いでもあるの……だから、今から私たち三人が住む家をあなたたちに作ってもらうわ」
ネルミアーラさんが魔王さんといった感じの風格でそう言うと、魔王軍の人たちやシャルの連れてきた人たちが少しざわついた。
「魔王様の願い……」
「やるしかねえ……!」
「シャルローネ様の……」
「やるぞ……!」
そして、そのざわつきは少しずつ大きくなり、やがて────
「よーし!人間だろうが魔人だろうが関係ねえ!!それぞれの主人のために全身全霊を尽くすぞ!」
「おおおおおおお!!」
そんな歓声が上がると、早速その人たちは人や魔人といった境界を全く感じさせないほどの一体感を持って建築作業に取り掛かり始めた。
「では、私はこの場の管理を担当させていただきますね」
そう言ったローズさんに対してネルミアーラさんが「えぇ、任せたわ」とだけ言うと、ローズさんはネルミアーラさんに頭を下げ────再度頭を上げると僕たち三人へ向けて言った。
「お三方のお幸せを、これからも全力で支えさせていただきます」
「ありがとうございます、ローズさん」
僕がそう言うと、ローズさんは優しく微笑んで建築作業を行い始めた人たちの方へ歩いて行った。
僕は、そんな光景を見てふと呟く。
「今まで世界が夢見てきた光景が広がっているかと思うと、本当にすごい光景だね……うん、とても良いよ」
「うん……ウェンのおかげだね」
そう言ってゆっくりと僕の左腕に自らの右腕を絡めてきたシャルに、僕は首を横に振って言う。
「ううん、僕は何もしてないよ……シャルとネルミアーラさんが────」
「いいえ、私とウェンくんの愛のおかげよ……だから、もし目の前の光景が良いと思うなら、それはウェンくんのおかげで生まれた光景よ」
僕の言葉を遮ってそう言ったネルミアーラさんも、シャルと同じように僕の右腕に自らの左腕を絡めてきた。
「ネルミアーラさん……」
僕がそのネルミアーラさんの言葉に心を打たれていると、隣に居るシャルが僕と腕を絡めたまま足を進めて魔王城の方向へ向かいながら言った。
「それにしても、ウェンってば欲張りだよね~、公爵家の私と魔王であるネルミアーラの二人と幸せになりたいなんてさ」
シャルが足を進めたことで、僕やネルミアーラさんも足を進めざるを得なくなりながら言う。
「そ、それは……うん、僕にはもったいないぐらい、本当に幸せなことだよ」
僕がそう言うと────シャルとネルミアーラさんは、全く同じタイミングでそれぞれ僕の頬にキスをして来た。
「え……!?」
僕が突然キスされたことに驚いていると、二人は言った。
「もったいなくなんてないよ、私はウェンにいっぱい幸せになって欲しいからね」
「えぇ……ウェンくんのことを、世界で一番幸せにしてあげるわ」
「……」
二人の気持ちは、とても嬉しかった────けど。
僕は、二人の唇にキスをしてから言った。
「それなら、僕が二人のことを世界で一番幸せにしてみせますね」
「っ……!ウェン!」
「っ……!ウェンくん!」
僕がそう伝えると、二人は同時に僕のことを抱きしめてきた。
僕は、そんな二人のことを愛らしく思いながら抱きしめ返した。
……シャルの気持ちにずっと気付けなかったり、ネルミアーラさんとの記憶が封印されてしまったり、これまで色々なことがあったけど────これから先は、僕が絶対にこの二人のことを幸せにする。
僕は、この二人のことを抱きしめながら、そう強く誓った。
────そして、一週間後。
シャルの家の公爵家に雇われている人や魔王軍の人たちが建ててくれていた家が完成し────いよいよ、僕たち三人の幸せな生活が幕を開けた。
◇
この物語は、この話を持って最終話となります!
作者がこの物語に抱いている気持ちなどは、次エピソードで17時30分に投稿されるあとがきとして語らせていただこうと思いますので、ここでは手短に。
ヤンデレ魔王様に捕まった平民の僕、何故か魔王様から愛の告白を受ける。という物語をこの最終話まで読んでいただいた方々、いいねや☆、コメントをくださった方々、皆様本当にありがとうございました!
この物語を最後まで読んでくださったあなたのこの物語に対する感想をいいねや☆、コメントや感想レビューなどで教えてくださると幸いです!
また次エピソードに投稿されるあとがきや、別の物語でお会いできることを楽しみにしています!
この物語を最後まで応援していただき、本当にありがとうございました!
◇
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