第53話 キス
「ネ、ネルミアーラさん!?」
僕が、突然ネルミアーラさんがこの部屋に入ってきたことに対して驚きの声を上げると、ネルミアーラさんは僕達に近づいてきた。
すると、座っていたソファ立ち上がったシャルは、僕達に近づいてきたネルミアーラさんに対して大きな声で言った。
「今すっごく良い雰囲気だったのに!なんで邪魔するの!?」
「私とローズが話している間に勝手に抜け駆けしているのが悪いのでしょう?大体、私があなたとウェンくんがそういったことをしようとしているのを黙って見ている理由なんて一つも無いわ」
「私とウェンはもうこ、恋人なんだから良いじゃん!ね、ウェン?」
今までちゃんと恋人という言葉は使っていなかったけど、好きという気持ちを通じ合わせて今後もずっと一緒に居ると言い合っている以上、それは立派に恋人と言えるはずだ。
「うん」
僕は、シャルの問いかけに対してそう答えた。
すると、次にネルミアーラさんが言う。
「ウェンくと恋人と言う言葉を使うなら、私だってそうよ……そうよね?ウェンくん」
当然、ネルミアーラさんもシャルと同様、僕とお互いに好きと言う気持ちを通じ合わせて、今後もずっと一緒に居ると言っている関係性のため、ネルミアーラさんとも立派に恋人と言うことができるはずだ。
「はい」
僕がそう返事をすると、ネルミアーラさんは得意げな表情で言った。
「恋人が自分以外の女とそういったことをしようとしているのだから、それを止める権利ぐらいはあっても良いはずよね?」
「でも、それは私の方にだって言える話じゃん!私はウェンの恋人なんだから、ウェンとそういったことをする権利はあるでしょ?」
「私にだってその権利があると言っているのよ、それなのにあなたが何も告げずに抜け駆けしてウェンくんとそういったことをしようとしていることが気に入らないと言っているの」
「それは────」
その後、二人はまたも言い争いを始めてしまった……僕が二人の気持ちに対する答えを出すまでの言い争いとはまた形の違う言い争いだけど、僕はどんな形であっても二人に言い争って欲しくなんてないため、ソファから立ち上がって二人のことを抱きしめて言った。
「もうそんな風に言い争わないでください……僕は二人のことが大好きで、二人ともとそういったことをし……したいと思っているので、二人がしたいと言うなら僕もいつでも応じますから」
「ウェン……!」
「ウェンくん……!」
僕がそう伝えると、言い争っていた二人は言い争うのをやめて、僕のことを抱きしめ返してきた。
そして、ネルミアーラさんが言う。
「ウェンくん!私、ウェンくんとさっきシャルローネがしようとしていたキ……キスを、ウェンくんとしたいわ……良い、のよね?」
そう言うと、ネルミアーラさんは甘い表情で僕に顔を近づけてきた────かと思えば、シャルはネルミアーラさんに顔を近づけて言った。
「私の方が先にウェンとそういう雰囲気になったんだから、私が────」
「それは、あなたが抜け駆け────」
シャルが、僕に顔を近づけているネルミアーラさんに顔を近づけたことで、結果的に僕とも顔が近くなって────僕は、シャルとネルミアーラさんの二人と、ほとんど間を空けずに唇を重ねた。
僕が唇を重ねた瞬間、先ほどまで言い争っていた二人は言い争うのをやめ、頬を赤く染めて目を大きく開いて僕のことを見ていた。
「これが……僕の二人への気持ち、です」
僕も、初めてのことに少し恥ずかしさを覚えながらもそう伝えると、二人も僕と唇を重ねてきて、僕のことを強く抱きしめてきた。
「ウェン……大好きだよ」
「ウェンくん……大好きよ」
その後、僕達は三人だけの空間でしばらくの間抱きしめ合った。
────その時間は、とても愛情を感じることのできる時間だった。
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