第24話 ダメ
◇ウェンside◇
ローズさんの領地にある、館のような建物に一晩泊まらせてもらえることになった僕たちは、シャルの作ってくれた料理を一緒に食べていた。
「どう?ウェン、美味しい?」
「うん、最近は旅をしていたから本格的なシャルの料理を食べるのは久しぶりだけど、やっぱりシャルの料理がどの料理よりも僕の舌に合う感じがするよ」
「え、えへへ、そ、そう?」
僕が思ったことをそのまま伝えると、シャルは頬を赤く染めて照れながらも嬉しそうにしていた。
「確かに、シャルさんの料理は絶品ですね……とても素晴らしい腕をしていると思います」
ローズさんがそう言ってシャルのことを褒めた────けど、シャルはローズさんの声を聞いた瞬間に、頬を赤く染めて嬉しそうな表情をしていた顔をやめて、ローズさんの方を向くと嫌味を言うような口調で言った。
「本っ当に、どこかの誰かさんが一緒じゃなかったら、今の時間がもっともっと幸せだったのにな〜」
「まぁ、一体どなたのことでしょうか?」
シャルの嫌味に対して、本当に誰のことなのか分かっていないようにローズさんがそう言うと、シャルは大きな声で言った。
「魔王の側近で露出した服を好む魔人ローズに決まってるでしょ!」
そこまで言われてようやく理解したのか、ローズさんは頷いて言った。
「なるほど、私のことだったのですね……ですが、幸せ……と言えるのかどうかは置いておいて、少なくとも楽しいと思える時間は後ほど過ごせると思いますので、そちらの方をお楽しみにされては?」
「……後で過ごせる楽しい時間ってなんのこと?」
「決まっているではありませんか────三人で共にお風呂に入るのです」
「え……?」
「はぁ!?」
ローズさんからそんな衝撃的な言葉が出て困惑した僕だったけど、そんな僕の困惑の声は先ほどよりも大きな声を出したシャルの声によってかき消されてしまった。
でも、シャルが大きな声を出すのも当然と思えるほどに、衝撃的な言葉であることは間違いない。
シャルは、続けて大きな声で言った。
「どうして三人で一緒にお風呂に入らないといけないの!?」
「入らないといけない、というわけではありませんが、その……」
基本的にはずっとマイペースに微笑んで話していたローズさんだったが、今は少しだけ頬を赤く染めて僕の方を見ながら言った。
「ウェン様が、先ほど私のことを綺麗だと仰ってくださったので、もっと私のことを綺麗だと感じていただきたく……こう見えて、肉体には少々自信がありますので────」
ローズさんがその続きを言いかけた時、シャルがそれを遮るようにしてさらに大きな声を出して言った。
「絶っっっっっ対ダメだから!!そんなこと絶対私が許さないから!!」
「どうしてでしょうか?シャルさんもウェン様と共にお風呂に入れる機会なのですよ?」
「ウェンとお風呂に入るんだったら二人で入りた────」
と言った時、シャルは一度僕の方に視線を移すと突然頬を赤く染めて再度口を開いて言った。
「いじゃなくて、とにかくダメなものはダメなの!!」
その後、シャルとローズさんはまたもしばらくの間お風呂に関することで言い合いを行っていた。
……言い合いなんて普段は心が落ち着くことはないけど────明日魔王に会うという緊張感があった僕には、なんだかこの日常といった雰囲気が緊張を解してくれた感じがした。
そして、言い合いの結果一人一人お風呂に入るということになり、僕たちはそれぞれがお風呂に入り終えると、それぞれ別の部屋で眠りにつき────ベッドの上で目を覚ますと、いよいよ魔王に会う日がやって来た。
目を覚ました僕が上体を起こして、ふと隣で誰かが立っているような気配がしたのでそっちの方を向くと────
「え……!?」
そこには、何故か僕の部屋に入って来ているシャルの姿があった。
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