第23話 直接
「────ウェン!なんでこの女のこと褒めてるの!?」
少しの間沈黙が場を包んでいると、シャルが僕に対して大きな声でそう言った。
僕は、そのシャルから放たれた突然の大きな声に少し動揺しながらも言う。
「褒めたっていうか、ただ思ったことを言っただけだよ」
僕がそう言うと、シャルはさらに大きな声で言う。
「だったら余計にダメじゃん!私にはほとんど可愛いとか綺麗とか言ってくれないくせに!出会ってほんのちょっとしか経ってないこの女にはそういうこと言っちゃうんだ!」
「確かにシャルに伝えることは少ないかもしれないけど、僕はずっとシャルのことを可愛いと思ってるし、綺麗だとも思ってるよ?」
僕がそう言うと、シャルは目を見開いて、少し間を空けてから頬を赤く染めて言った。
「そ、そう……?それなら、まぁ……それは、良いんだけど……」
その後、シャルはさっきまで大声を出していたとは考えられないほどに潮らしくなった。
かと思えば、ずっと静かに僕のことを見つめてきていたローズさんが口を開いて言った。
「私は……今まで、少なくともウェン様やシャルさんと比べればとても長い時間を生きてきましたが────人間に綺麗だと言われたのは、これが初めてです」
「そうなんですか……?」
「はい、私は魔王の側近ということで人間たちに敵対視されており、そもそも人間と話すようなこと、ましてや容姿に関する話をすることなど今までありませんでしたから」
なるほど……今回の場合は、そもそもローズさんが僕たちに対して敵対するつもりが無かったから今みたいに非戦闘状態になっているけど、普段はそうじゃ無いのかもしれない……でも、今回が普段と違う対応をしているということは────
「ローズさんに一つ聞きたいことがあるんですけど……僕が魔物に狙われることと、魔王軍は関係があるんですか?」
僕がさっき考えていたことから、僕が魔物に狙われることと魔王軍の関連性への疑念を強めると────ローズさんは頷いて答えた。
「はい、ウェン様が魔物に狙われているのは魔王軍────いえ、魔王様に関係があります」
「っ……!」
さっきまで頬を赤く染めて潮らしくなっていたシャルだったけど、僕が魔物に狙われている理由と魔王に関係があるということを聞いて、頬を赤く染めていた表情から打って変わって緊張感のある表情になった……今までシャルとも可能性としては話し合っていたけど、まさか本当に魔王が僕のことを……でも、だとしたら。
「どうして、僕は魔王に狙われているんですか?何か魔王の気に障るようなことでもしてしまったのでしょうか」
僕には、魔王に狙われないといけない理由に心当たりが無かったため、抱いていた疑問をそのまま魔王の側近であるローズさんに投げかけると、ローズさんは言った。
「その答えは────この後、是非直接魔王様からお聞きください」
「え……!?」
僕は、まさか直接魔王に会えることになるとは全く想像もしていなかったので、そのローズさんの言葉に驚いた────けど、シャルは驚きではなく、怒りを奮い立たせるようにしながら言った。
「それなら、ようやく十年もの間ウェンのことを魔物に狙わせ続けた張本人の魔王に会えるってことだよね……魔王なんて言っても、私とウェンが二人で戦えば負けるわけないし、ね!ウェン!」
「うん……でも、魔王がどうして僕のことを狙ってきてるのかはやっぱり気になるから、それもちゃんと聞かないとね」
「うん!それを聞いてスッキリした上で、魔王のこと倒しちゃおうよ!」
「お二人とも、魔王様に会うことにご抵抗が無いようで何よりです……本来であれば今すぐにでも魔王様の元へお二人のことをお通しすることもできるのですが────本日は長旅でお疲れでしょうし、この領地にて一晩お休みになられてください」
そのローズさんの提案に対してシャルは今すぐに魔王を倒しに行きたいと否定的な意見をぶつけていたけど、僕はそんなシャルのことをなんとか説得して、一晩しっかりと休ませてもらった後で魔王の元へ行くことにした。
魔王……一体、どんな人物なんだろう。
◇魔王side◇
「ウェンくん……あと少し、あと少しで会えるわね……」
────私は、あと少しでウェンくんと会えるという事実に、胸を高鳴らさずには居られなかった。
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