第4話 敵襲

◇ウェンside◇

 門の外へと向けて走っていた僕とシャルだったけど、門の外へ出る前に門兵の人に声をかけられた。


「き、君たち!さっきのが聞こえなかったのか?今は魔物がこの街を襲撃に来ているから、街の外へ出てはいけない!」

「先ほどの声は聞こえていました……でも、僕たちは魔法学校を卒業しているので、少しは戦力になれると思います」

「ま、魔法学校の……?」


 その単語を聞くと、門兵の人は少し沈黙して考え事をしている様子だった。

 卒業した僕が言うのも嫌味に聞こえてしまいそうだけど、魔法学校はとても有名な学校で、卒業するのがとても難しいとされている……でも、その分卒業した生徒の強さはある程度確約されているため、その卒業生が戦力に加わってくれるとなるとこの人たちにとってもありがたい話だろうし、僕たちにとってももしかしたら何か僕が魔物に狙われている原因の一端が見えるかもしれないため、お互いにとって利益のある話だ。

 少し沈黙して考え事をしていた門兵の人は、重たい口を開いて言った。


「今日はいつもよりも魔物の数がかなり多いみたいだったから、君たちが戦力に加わってくれると言うのであれば願っても無い話……だが、無茶だけはしないように」

「ありがとうございます」


 そう会話を終えると、僕とシャルは一緒に門の外へと走った。

 すると、そこでは障害物や罠装置、剣や盾を武器にして戦っている人たちの姿があった。

 相手は────


「オーク……それもこんなにも大勢」

「ふんっ!オークなんて、私の魔法で全員瞬殺してあげる!」


 そう言って魔法を放とうと手を構えたシャルに、僕は落ち着いて言う。


「ダメだよシャル、この乱戦状態だと、今オークと戦ってる人たちのことも巻き込んじゃうからね」

「そっかぁ、じゃあ一体一体やっていくの?」

「うん……大丈夫、きっと僕たちならすぐに終わるよ」

「わかった!」


 その後、僕とシャルは────オークの方へ向けて駆け、オークを倒して回り始めた。



◇魔王軍side◇

「きゃあ〜!ウェンくんかっこいい〜!動きが洗練されてて!無駄が無くて!次々に敵を倒して行くのかっこいい〜!」


 ウェンがオークと戦っているところを見ながらそう騒いでいる魔王のことを見ながら、赤髪の側近は言う。


「魔王様はどちらを応援していらっしゃるんですか?」


 そう聞かれた魔王は、間髪入れずに即答した。


「ウェンくんに決まってるじゃない……街を滅ぼすのはあくまでも手段であって、今状況を見た限りだと街を滅ぼさなくても目的は達成できそうだわ」

「そうですか」

「えぇ……それはそれとして────ウェンくんの動きの一つ一つがかっこいいわ!今の動きを見たかしら!ジャンプで後ろを振り向いた瞬間にオークを倒していたのよ!あぁ、ウェンくん、ウェンくん、ウェンくん……!早く会いたいわ……」


 魔王は深い愛情を込めてそう呟いた。



◇ウェンside◇

 オークを全て倒し終えると、隣に居るシャルが元気な声で言った。


「ウェンの言った通り、私たちだったらすぐだったね!」

「うん、やっぱりシャルが一緒に戦ってくれていると戦いやすくて、精神的にも安心感があるよ」

「そ、そう……?……私も、ウェンと一緒だと戦いやすくて、精神的にも安心感があるよ!」

「シャル……」


 僕は、シャルにそう言ってもらえるのが嬉しくなっていると、僕たちの元へ兵士の人たちがやって来た。


「あ、ありがとうございます!お二人のおかげで、この街は救われました!」

「本当にその通りです!なんとお礼を言って良いのか……」


 そう頭を下げてお礼を言ってくる兵士の人たちへ、僕は言う。


「救われたなんて、そんな……僕たちはできることをしただけですから」

「そんな……!お二人が居なければ、今頃この街がどうなっていたことか……今から街を挙げてお二人への感謝も込めて宴会を開かせていただきますので、是非お二人もご参加ください!」

「え……?」


 こうして、僕たちは僕たちに対する感謝の込められた宴会に参加させてもらうこととなった。

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