第21話 服

「魔王様、そのお顔は一体どのような意味を持つのですか?」


 ローズが、魔王の嬉しそうに口角を上げている表情を見て疑問に思うと、魔王は大きな声で言った。


「長かった……本当に長かったわ!あなたが露出度の高い服を着るのをやめる日がやって来るまで、本当に長かったわ……!けれどようやく……ようやく!あなたも露出度の高い服を着るのをやめて、普通の服を着るのね!?」

「……私は元より、魔王様の命令通り、ウェン様やシャルさんたちと戦うつもりはありませんでしたし、そうしなければ話し合いに応じないと言われれば応じるしかありません」

「そうよね!あのウェンくんに纏わりついてる女、今までの人生の中で一番の善行を行ったわね!」


 やけに上機嫌な魔王に気味の悪さを覚えながらも、ローズが言った。


「ですが……ここで問題があります」

「問題……?」


 魔王は、ようやくローズが露出度の高い服を着るのをやめるという場面で、もしローズの言う問題というもののせいでそれを為すことができなくなれば、結局今まで通りローズは露出度の高い服を着たままになってしまうため、次のローズの言葉に真剣な顔つきでローズの次の言葉に耳を傾けた。

 すると、ローズはその問題を口にする。


「私は、魔王様やシャルさんの言う、露出度の高い服と言うものしか服を持っておらず、普通の服を着るよう言われてもそもそもその服を持っていないのです」


 それを聞いた魔王は、真剣な顔つきをやめて口角を上げながら言った。


「それなら問題ないわ!少し待っていなさい!」


 魔王にそう言われたローズは、大人しくその場で魔王のことを待つことにした。

 ────そして、少しだけ時間が経つと、魔王は移動型クローゼットを持って来て言った。


「いつか、あなたに着させようと思っていたけれどあなたがことごとく露出度の服を着たがるから今まで着させることのできなかった服たちよ!ここにある服は、私があなたに着させたいと思っている服だから、露出度の高い服は一つも存在しないわ!」

「まぁ、そのようなものまで用意なされていたのですか?」

「当然よ!ウェンくんがこの魔王城へ来た時のことを考えれば、私の側近であるあなたはどうしても私と定期的に顔を合わせないといけない……けれど、ウェンくんにあなたのような刺激の強い格好をした女の姿を視界に入れて欲しくはないということを、私はずっとどうすれば解決できるのかを練りに練りに考えて来たんだから!」

「……そうですか」


 ローズは、その行動力に少し驚きを抱きながらも、そのクローゼットの中にある服を見てみる。

 そして、一言だけ呟いた。


「……私好みの服が一着もありませんね」

「あなたの好みは露出度の高い服なのだから当然よ!」

「困りました……」


 好みの服が無い状態で服を選ぶというのは、好みの服の中からどれを着ていくかを決めること以上にとても難しいことだった。

 だが、ことを進めるためにはこの中にある服のどれかを着ないと話が始まらないため、ローズは露出度という点は取り除いて、その中で好みな服を選んでそれを着用した。

 その服を着たローズが、魔王に聞く。


「……魔王様、私にこの服は似合っていますか?」


 ローズがそう聞くと、魔王は言った。


「えぇ、あなたは容姿が整っているから、ちゃんと似合っているわよ!」


 そう言われたローズは、やはり露出度の低い服を着ている己に違和感を抱きながらも、魔王に言った。


「でしたら……この服で、ウェン様とシャルさんの元へ行ってきます」


 そう言うと、ローズは魔王城から出てウェンとシャルの待つローズの領地へと向かった。

 着なれない服を着ていて、ローズは普段全く気にしない、今の自分の姿は異性から見てどう映るのかをとても気にしていた────つまり、今から会う異性、ウェンは今の自分の姿に対してどう思うのかを、とても気にしながらローズの領地へと向かった。



 更新時間が40分遅れてしまい申し訳ありません!

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