第20話 条件
◇シャルside◇
私とこの女は、少しの間魔法を放ち合った……けど、お互いに一向に攻撃が届かない。
私は、そのことに苛立ちを覚えながら大きな声で言った。
「もう!大人しく私にやられて!!」
そう言いながら魔法を放つも、この女も同じように魔法を放ってきて私とこの女の魔法は相殺された。
そして、この女は言った。
「私とこれほどに戦える方はとても久しく、思わず気分が上がってしまいそうです」
私が、この女に対して何から何まで癪に障りそうな嫌悪感を抱いていると、目を瞑っているウェンが言った。
「シャル?苦戦してるなら、僕も手を貸そうか?」
私が手間取ってるせいで、ウェンに余計な気遣わせちゃった……!
私は、できるだけウェンに心配をかけないために、落ち着いた声音で言った。
「ううん、大丈夫だよウェン、すぐに終わらせるから」
そして────この女に近づくと、私は怒りを含めて言う。
「さっさと私にやられてくれないせいで、ウェンに変な気遣わせちゃったじゃん!」
「それはそれは、とても理不尽ですね……ですが、このまま戦っていては、おそらく長期戦になりますが、長期の間ウェン様に目を瞑らせ不安なお気持ちにするおつもりですか?」
「っ……!そうならないために、私が今すぐにでも倒すって言ってるの!!」
そう言って、私は風魔法を放つ────すると、この女は氷魔法で作った氷を壁にしてその風魔法を防御した。
届かない……!……ウェンと二人で戦えば勝てる────けど、この女の姿を、ウェンの視界に入れたくない!
「残念ですが、私をそう簡単に倒すことは不可能です……なので、ここは一度戦うのではなく話し合いを行いませんか?」
「話し合い……最初、私たちのことをもてなしに来ただけとか言ってたっけ」
「はい、今はシャルさんが私に攻撃を加えてきていますので、止むなくそれに応対する形で戦闘を行っていますが、本来であれば私はウェン様やシャル様とこのようなことをしに来たわけではなく、最初にもお伝えさせていただいたとおり、あくまでもお二人のことをもてなしに出向かせていただいただけなのです」
……この女の話を信じるわけじゃないけど、確かにこのまま私とこの女が戦ってても長期戦になることは避けられない……そして、そうなったらきっとウェンは私のことを心配する。
「……」
私はそれらのことを加味して考えた結果────一つの答えを出した。
「わかった……じゃあ、ひとまず戦うのはやめてあげる」
そう言うと、私は手を下ろし戦う意思が無いことを示した。
「ありがとうございます」
すると、この女は微笑んでそう言い、私と同じように手を下ろして戦う意思がないことを示してきた。
「だけど────一つだけ、この条件を飲めないなら、話し合いなんてできない」
「……それは、何でしょうか?」
私は、今私がこの女に要求したいことを大きな声で言った。
「今すぐ!そんな露出の高い服じゃない、普通の服に着替えて来て!!」
「……しかし、私はこういった服しか────」
「これが聞けないんだったら話し合いなんて絶対しないから!!」
私が強くそう言うと、この女は少し間を空けてから言った。
「……少々お待ちください」
それだけを言い残すと、この女は姿を消した。
……とりあえず、一度は戦闘が落ち着いたことで、私はウェンに言う。
「ウェン、今はもう私しか居ないから、目を開けていいよ」
私がそう言うと、ウェンはゆっくりと目を開けて聞いてきた。
「シャル……ローズさんが居ないってことは、もうローズさんとの戦いは終わったってこと?」
距離があったから、ウェンには私とあの女の会話が聞こえてないみたい。
私は、あの女が戻ってくるまでの間、ウェンにこの話の流れを説明することにした。
◇魔王軍side◇
服を着替えるように言われたローズは────魔王城へ戻って来た。
そして、ローズが魔王城へ戻ってくると、魔王は嬉しそうに口角を上げながらローズのことを出迎えた。
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