第54話 思考回路
結論から言おう。王様は死んでいた。瓦礫の中にそれらしき死体を発見した。爆発に巻き込まれたのか、爆破男に殺されたのかはわからないが、どちらにせよ爆破男と私たちの目的って実は同じだったのではないだろうか。という思考になったが、まあ私たちを攻撃してきたので敵だろう。
さて、これによって問題が一つある。私たちの今日の行動に果たしてどれほどの意味があったのか。ということだ。状況を見るに、私たちが何もしなくても王は爆破男が何とかしてくれて、姉さんの言うより多くの人が助かる結末ってやつになったのかもしれない。今回は私たち側に犠牲者がいなかったから魔力と体力を大量に使っただけに止まったが、死人が出てもおかしくなかった。いや、違うな。被害はそれだけではない。聖女エレインが私たちが拠点にしていた小屋に閉じ籠ってしまった。そのため私は小屋に入れず小屋の前で座っているわけだが。まあ、推定親友が死んでしまった……というか私が殺してしまったのだから無理もない。むしろ私に怒りの矛先を向けないのが不思議なくらいだ。
さて、私は我ながら冷淡に、客観的に、純然たる事実を述べただけであるようにエレインについて解説したわけだが、これには私が一番驚いている。私はもっと友愛と情に溢れる乙女だったはずなのだが、知り合いの親友が死んでしまったことに対して、殺してしまったことに対して驚くほど何も感じない。
「私ってもしかしてクズなのかな?」
「……きゅうに、どう、した?」
思わずため息交じりに呟いた言葉に返答があった。フォカプである。というより、姉さんは急な王城崩壊でパニックになっている人のケアに行っているので、この場には私とフォカプしかいない。王城奇襲を仕掛けた本人がどんな顔して……と思わなくもないが、姉さんにとっても社会全体から見てもそれは正義なのだろう。争いの種を生み出していた王を最小の犠牲で排除し、それによって一時混乱状態になっている民衆をまとめているのだから。
「というか、フォカプはなんで居るの?フォカプより強い爆破男さんは倒したんだし、もう私と敵対するはずじゃなかったっけ?」
「ばくは男、じゃない。おそらく……じんぞう、とっきゅうけいかく五号。……というか、敵対、してほしいの?」
「いや?戦わなくて済むのなら戦いたくないね」
「……でしょ?だから」
だからなんだよ……いやまあ、わかっている。どうやら先の戦いを経て変な友情のようなものが芽生えたらしい。どちらにせよ厄介な敵が一人減るのは喜ばしいことだ。そのためなら一度殺したことは水に流してやろうじゃないか。
………はあ、私は人の心がないのだろうか。なんだよ、殺されたけどあんまり害はないから水に流すって、考え方ゴーレムかよ。これは由々しき事態だぞ。私ってもともとこんなんだったか?いや違う。昔はもっとなんかこう、あったはずだ。
「フォカプよ、人間らしい感情に取り戻し方って知ってたりするかい?」
「?こわれた?」
辛らつだなおい。しかしどうするか………ん?そういえば、なぜこのままだといけないんだ?姉さんも思考回路が若干壊れている節があるし、このままでいいのでは?むしろお揃いでは?
「いや、やっぱこのままでいいかも」
「???」
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