第41話 出会いからの……

 さて、私と姉さんは今王都にいる。いや、正確にはここ三日ほどずっと王都に潜伏している。あれだね、うん。あまりにもノープラン過ぎたね。いや、流石に王城の警備を舐めすぎていた。いくら特級職といっても聖女が二人だし、お世辞にも暗殺に向いてるとは言えない。正面突破をするにしても相手側に特級職がいるのであれば殺し合いに発展するだろうし割とどうしようもない。というわけで、あるかもわからない打開策を探しつつ王都に潜伏しているのである。


 「はあ~……もういっそ王城ごと王を壊してしまえばいいんじゃないかな……」


 思わずそんなことをつぶやきながらそれなりに人通りの多い市場で適当な食料を買っていると自分は何をしているのだろうかと真剣に考えてしまう。ちなみに姉さんは王城周りを観察している。不審者的行動は姉さん的正義に抵触しないのかと思ったが、悪を倒し大勢の命を救うためならばいいらしい。最近になってやっと気が付いたのだがなんというか、姉さんの正義は少し歪んでいる気がする。こう……1000人を救うために10人を犠牲にしなければならないとなったら一旦は全員救う方法を考えるけどその後10人を平然と殺して回る……的な?大勢の命を救うためには自分を犠牲にすることさえよしとする……的な?


 そんなことを考えているうちに買い物が終わる。


 「さてと……帰るか」


 そう言いながら裏路地のような場所に入る。いい加減人が多いのが鬱陶しくなってきていたのだ。そう、人が多いのは得意じゃないんだよ……というか引きこもっていたい。なんでこんなことになったんだろう……。


 ドンッ


 そんなことを考えていると曲がり角から出てきた人にぶつかってしまった。


 「あ……ごめんなさい」


 「いえ、こちらこそすみません」


 また思考が脱線していたからか、それとも相手が少し気配を消していたからなのかはわからないが、とりあえず謝りつつ目の前のぶつかった人を観察する。声から察するに女性のようだがローブのフード部分を目深にかぶっていて顔がよく見え………ん?おお?


 「えっと………エレイン、ちゃん?」


 「………え?あ、リリーちゃん」


 よく見れば見知った顔であったその少女は、今回………いや、前回の勇者パーティーでの聖女枠だった華炎かえんの聖女エレインであった。


 「………え?なんでこんなところでこそこそしてるの?そういう趣味?」


 「り、リリーちゃんこそ……死んだって聞いたんだけど?」


 「あ……」


 そういえばそうだった。というか、もしかしてこれってまずいのでは?エレインちゃんが王の側であった場合即戦闘になる可能性もあるんじゃ……。そう思って少し身構える。


 「いやいや、エレインちゃんこそこんなところでこそこそどうしたの?仮にも元勇者パーティーなんだから堂々としてなよ」


 そう返すとエレインちゃんは何かを思い出したように焦った表情を浮かべる。


 「あ、そ、そういえば!大変です!大変なんですよ!!!ニョーラが……ニョーラがッ!!!」


 「お、落ち着いて?ゆっくり話そう」


 予想外の反応に少し驚きながらもエレインちゃんの話を聞いた。


 話の内容を要約するとこうだ。魔王討伐の旅の中で仲良くなった賢者ニョーラ。旅が終わり王都に帰ってきてもしばらく一緒にいたのだが、いきなり王に呼び出され、なんなら捕まってしまったらしい。目的としては人体実験がどうとか。そして感動的な友情ストーリーを得て何とかエレインちゃんは逃げだすことができたのだという。………つまり、あれだ。うん。そこで私は私と姉さんが王の殺害を目論んでいることを話す。


 つまり、私たちとエレインちゃんの目的はほぼ同じであるわけで………聖女エレインが仲間になった。

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