第38話 再会

 聖女リリーの頭を消し飛ばしとどめを刺した後、魔王のいた広間から出て聖女ルーズフェルタのところへ行く。術の展開以外仕事がない彼女は安全のため広間から出ていたので、私の姿を認めると声をかけてくる。


 「フォカプさん、出てきたということは……魔王討伐は終わったのですか?それで、ほかのお二人はどこに?」


 「うん……終わった、2人は……中にいる」


 そう言って広間の中を覗き込もうとした聖女ルーズフェルタは後ろから殺した。聖女は生命力が高いことはさっきの聖女リリーで思い知ったから念入りに燃やしておいた。


 「さて、これで…………私がさいきょう。…………帰ろう。」





 ※





 「…………っは!」


 目が覚めるとどこか知らない広間の中にいた……違う。知っている。ここは魔王城の大広間で、私たちは魔王を討伐に来た、それでフォカプが急に裏切ってきて……


 「やあ、久しぶりだね。リリー、元気だった?」


 「……え?」


 その、久しぶりに、本当に久しぶりに聞くような声に振り向くと。


 「姉さん……?」


 「そうだよ?」


 あ、なるほど、死後の世界的なあれか。いやはや、そんな娯楽小説か何かのような展開が実際に起こるとは思っていなかったが……まあ、姉さんにもう一度会えたのだからいいだろう。すべて許そうじゃないか。


 「……あ~、多分リリーの考えていることは間違ってるよ?ここは現実だし、リリーは私が蘇生したんだ。リリーの仲間の人たちは体の損傷がひどくて蘇生できなかったけど…………リリーだけでも助かってよかった……」


 そう心底嬉しそうに言う姉さんの言葉に少し引っ掛かりを覚える。さっきから、急に殺されて生き返ったら姉さんがいたりといろいろあったため忘れていたが、姉さんは魔王に殺されたのではなかったか?いや、今生きているのであればその情報に間違いが……?いやいや、もし生きていたのでれば何故私のところに来てくれなかったのだろう?


 「ねえ、姉さんは魔王に殺されたんじゃないの?というより……なぜここに?」


 「まあ話せば長くなるのですが、私は実は魔王軍の四天王の位を得ているのですよ」


 「…………は?え、どういうこと?全然わかんないんだけど?」


 本当に意味がわからない。何を言っているんだろう、四天王……?姉さんが?


 「リリーはこの世界でより多くの人を救うためにはどうするべきかわかりますか?」


 そう問われたことでいったん思考を切り替えて質問に答える。


 「それは……魔王を倒せばいいんじゃないの?魔族の方々には申し訳ないけど、人類の方が魔族よりも数が多いし、人類の脅威を取り除くことができれば少なくとも人間は助かるんじゃ……?」


 「違うよ、正解はね?


 「え、っと……?それは……なんで?」


 「それは、人類の王が魔族を拉致して怪しげな実験に利用してるからなんだよ。だから魔族は人間を憎んでいるし、戦いも生まれる。大丈夫、人間側にも王が悪者だって噂は少なからず流しているし、人類の辺境の村には平和の協定を結んだ場所もいくつかある。無駄な血は流れないよ」


 待ってくれ、情報量が多くて思考が追い付かない……つまり、悪いのは人類の王で、それをなるべく血の流れない方法で解決するために人類を内側から懐柔している、と?あまりにも急展開だな……。というか、そんな噂なんて一度も聞いたことが…………いやまあ私引きこもってたからな……。


 証拠は一切ない、だが、まあいい。姉さんが言っているのだ、信じよう。だが、だがもう一つ重要なことがある。


 「……生きているなら、なんで会いに来てくれなかったの?」


 そう問うと、姉さんは一瞬申し訳なさそうな顔をした後


 「プルチネに任せていたし、人類側の工作が忙しくてね……ごめんね?」


 その言葉に対して怒ることはしない。本当は私を優先しろとわめき散らしたかったけれど、言ったところで姉さんを困らせるだけだし、姉さんは昔から多くの命を救うためならば周りは見えなくなる人だった。


 ほかにもあまりに聞きたいことは多すぎる。多すぎるが…………ひとまず姉さんと一緒に居られる今を嚙み締めよう。というか、急展開過ぎて質問がまとめられないし。

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