第39話 作戦
「それで姉さん、これからどうするの?」
そう疑問を飛ばす私に姉さんは少し驚いたような顔をする。
「リリーなんだか雰囲気が変わったよね」
「そう?十年弱経ってるんだからそりゃそうじゃない?」
「いや、そうなんだけど……いま、というかさっき仲間の方が死んだんだよ?なんかこう……ないの?」
姉さんにそんなことを聞かれ、ああ、と思い至る。
「いやいや、出会って一週間もたっていないし、他人だからそんなに何か感情が湧いてきたりとかはないかな」
「そ、そうなんだ…………人の命は大切にしなきゃだめだよ……?」
「ああ、うん。わかったよ姉さん」
そう返しながら、そういえば最近どこかでこんな言葉を言われた気がするなと考える。…………ああ、エルナだ。そういえばエルナに似たようなことを言われた。確かあれは珍しく私とエルナが二人で外に出かけた日……。
「うえ、人多すぎ……全員消してしまおうかな?」
「……え?何言ってるんですか師匠?嘘ですよね??……人の命は大切にしましょうよ……」
みたいな感じのやり取りだったか。そう言えばエルナは今頃どうしているだろうか、二週間も離れていないけれどそれなりに悲しいものだな。そう感じたことで私の中でのエルナの価値がかなり上位に位置していることを自覚し、しかしなんだか気恥ずかしかったので思考を断ち切る。
「それで、やっぱり王城を攻めて王を迅速に倒して離脱っていうのが一番だと思うんだよね。魔王さんが死んでしまった今、こちらには人間側の特級戦力相手に耐久出来る戦力がないわけだから」
「ああ、もう辺境の村を説得して引き入れる時間はないわけね。…………というか、どうして初めから少数精鋭で王を殺しに行かなかったの?」
すると姉さんはさも当然というように
「だって、なるべく殺しはしたくないじゃない?人類の大半を説得してこちら側についてもらうことができれば、王様も考え方を変えると思わない?」
おおう……これがぐうの音も出ないほど聖人というやつか……本当に私はこの人と血がつながっているのか心配になってくる。いやでも待てよ……?
「そう言えば、姉さんはなるべく平和に事を収めるために魔王さんに協力してもらってた、ってことでいいんだよね?」
「まあ、そうだね。勇者パーティーの旅の帰りに魔王さんと会ってね、話し合いをしてみたら意見があったんだよ」
「そういう割にはあまり悲しまないんだね?その魔王さん死んじゃったと思うんだけど」
その質問に姉さんはああなんだそんなことかといった様子で答える。
「ちゃんと埋めたし、もうお別れはすんだよ。リリーの仲間の方もね。そんなことよりも今生きている人をなるべく多く救わないと」
─────簡潔。あまりにも簡潔にそう言葉を紡ぐ姉さんにわずかながら引っかかりを覚えながらまあそんなものかと納得し、王様の暗殺についての話を進める。
「少数精鋭といっても戦力に当てはあるの?魔王さんは死んでしまったし、ほかの四天王も死んでるんでしょ?」
「まあ……無いね。魔族側の戦力は軒並みいなくなっちゃったからねぇ……。」
「うーん……じゃあ、私たちだけで何とかする?できる?」
「やってみるしかない……かなぁ?早くしないと罪のない人が犠牲になってしまうかもしれないし……行動しないよりもましでしょ?」
そんなに適当に決めて私たちが死んだら意味ないのでは……とは言わない。言っても多分意味がない。
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