第50話 協力

 聖女リリーは一瞬この賢者の言っていることの意味が分からなかった。


 「手伝う………?これはまた急な話だね」


 急というか、おかしな話だ。こいつは一度私を殺したんだぞ?なぜ急に協力的になり始めたんだ。いや、というかもしもフォカプが敵なのだとしたらこの状況はかなりまずくないか?いやまずいな。勝ち目がほぼゼロからゼロになるレベルだ。もういっそ姉さんを抱えて逃げるか?姉さんはすごく怒るだろうが、正直私にはこの国の国民が多少死ぬことよりも姉さんが生き残る方が重要なのだ。


 「私を、信用できないのは………わかる。あの時の、わたしは………最強に、なりたかった。今はあいつらが、いちばん強いから。てつだう。」


 ふむ?えーと、つまり?最強に憧れていたフォカプちゃんは自分よりも強いものを皆殺しにすれば最強になれると考えて?魔王と自分と同等かそれ以上の実力である私たちを殺して最強になりたかったと?そして今度はまた強そうな城爆破男が出てきたから協力したいと?えぇ……


 「それ、この戦いで勝とうが負けようが私殺されるんじゃ……?」


 「だいじょうぶ、今回は……ふいうち、しない」


 敵対はするんだ……。


 まあいい。柔軟に考えよう。これはこちらの戦力が増えるチャンスだ。どうせこのまま戦っても勝ち目など薄いのだし、この際信用してしまうのはどうだろうか?いや、だがしかし………。


 「わかった!!信用する!協力するよ!!!」


 「ふふ…ありが、とう」


 「感謝なんてするんじゃない!」


 いやほんと、何を考えているかわからない敵のままでいてほしいものだ。調子が狂うじゃないか。


 「さて、これでひとまず二対二になったわけだけど、何か作戦とかあるかい?」


 「とりあえず、ぼこぼこ」


 「おーけー、作戦はなしね───おっと」


 フォカプと作戦会議と呼ぶにはあまりに拙いやり取りをしていると、また魔力の槍が投げられたので、それを跳んで避ける。しかし今度は人造聖女の方も合わせて攻撃してくる。連携とは小癪な………というか、話している途中に攻撃してくるとはマナーのなってないやつだ。いや、むしろ今まで待っていてくれたことが驚きではあるのだが。


 「あの男がいちばん強そうなんだけど、フォカプちゃん何とかできたりしない?」


 「ぼーっと、立って…いるなら、可能」


 「?………ああ、隙を作ってくれればできると?言い回しが分かりにくい美少女だな君は!」


 いやしかし、隙か……この城爆破男私の凱旋天門の効果内でも全然普通に動いてきて怖いんだけど……普通の状態ならどれだけ強いのか考えたくもないね。反対に人造聖女の方は動きが分かりやすい。こっちを先に潰して二対一に持ち込むことができれば何とか、って感じかな?いやしかし……できるか?


 「いやいや、やるんでしょう」


 「?どうした、リリー」


 「いやなに、自分と話してただけだから気にしなくていいよ」


 「えぇ……」


 おいフォカプ、なんだその目は。喧嘩を売っているのか?


 「とりあえず、できる限り早く人造聖女を潰して二対一に持ち込むのがいいと思うんだけど……できる?私は腐っても聖女だし、耐久関連に強いわけだからあの城男を一人で相手にしても多少耐えられると思うんだよね」


 「ん、それで……いこう


 相方から了承をもらったところでさっそく作戦開始と行こうじゃないか。


 「さあ、ミスター城男。私とタイマン張ろうぜ!!」

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