第49話 フォカヌポウ

 何やら急におかしくなってしまった女が落ち着くまで待ち、再び話しかける。


 「質問:この場所の詳細」


 「へ?こ、この場所の詳細?」


 「肯定:街の名前、立ち位置、その他常識的な情報まで詳細を求む」


 「お、おおう。なんだかわからないけどわかりました………」






 「──────理解:大体把握できた。礼を言う」


 もうこの女に用はないため、さっさと立ち去ろう。この女の情報の中に魔王に関する詳しい事柄は含まれていなかったのでそのあたりは他の方法を見つけなければ。


 「ま、待ってください!!」


 さっさと離れようとしたところを呼び止められる。


 「い、行くところがないのでしょう?わ、わ私のところに来ませんか?で、伝聞だけでは不十分かもしれないですし、いちど生活を体験など………」


 「………一理ある」


 「で、ですよね!ふひひ…び、美少女と一緒」


 「?」


 なんだか身の危険を感じるが、この女の言っていることに一理あるのも事実。何より、丁度長期間の活動を想定した拠点が欲しいと思っていたところではあるし、まあいいだろう。


 「あ、そ、そういえば……お、お名前はなんていうんでしゅか?」


 「回答:人造特級計画二号だと推測される」


 「え、それ……名前、ですか?本名?」


 「推測、といったはず」


 「そ、そうですか……でも長くないですか?二号ちゃん?」


 「……好きに呼べばいい」


 確かに先ほどのものを名前と呼ぶには少々無理がある気がしてきたのに、私の呼び方は女に委ねることにする。


 「そ、そうですか………じ、じゃあ、フォカプ。なんていかがでしょう?」


 「フォカプ……?名前の由来を聞いても?」


 「ふっふっふ……由来、それは!笑い、です。我らの笑い声を参考にしてみました!!やっぱり美少女は笑顔でいてほしいですからね!!」


 「?」



 先ほどからこの女の言っていることが理解できない時が定期的に訪れるのだが……。


 



 ◇





 成り行きからこの女───テラと生活し始めて数日が立ち、ある程度情報は集まったはずなのだが、私は未だにテラとともに生活をしていた。理由は………不明……。


 「フォ、フォカプちゃん!!こ、これを見てください!イラストのレベルが最近の娯楽小説のものと比べると頭一つ抜けていませんか!?表紙買いしてしまったのですが、これは来ます。今後この作者の作品はきますよぉ!!!ちょっとエッチなのも最高です!!!!」


 「同意:これは……なかなか…………。それにキャラクターのデザインがことごとく我らの癖に突き刺さるものになっている。恐らく狙ってやっているのだと考えられるが……策士。」


 今日も今日とてそのような談議に花を咲かせていると、突然テラが真面目な顔になる。


 「ふむ……フォカプちゃん。そのしゃべり方の話ですが、一般人の前ではやめた方がいいかも知れないですね。その、話す前に同意、とか疑問、とかつけるやつ」


 ふむ、なるほど。理由はわからないが同士が言うのであればそうなのだろう。


 「りょうか…………う、ん。わかった、これで……いい?」


 「おほぉぉぉぉおおお!!!」


 「ど、どうした!?」


 急に奇声を上げながら倒れこんだテラに駆け寄り、声をかける。


 「よ、よきです。そのコミュニケーションが下手くそなせいでたどたどしくしゃべっている感じ!!さいっこうに癖です!!!!!」


 「訂正:私は言語能力に不足があるわけではなく、テラの望んだとおりに話し方の────」


 「分かっていますとも、わかっていますとも!それでも、ですよ。例え真実がどのようなものであろうとも、受け手の癖に刺さればそれは素晴らしいものなのですよ。ぜひ!!ぜひそのしゃべり方を続けてください!!なんでもしますから!!!」


 圧が、圧がすごい!


 「う、うん。わかった……よ?」


 「くはぁ!」


 「て、テラ!?」


 また倒れた。

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