第45話 再会……?
人造賢者を前に一歩踏み出す。後ろで何かを言っているエレインはいったん無視して目の前の少女を敵として迅速に排除しようと動く。
『神想封過』
相手を封じ込めてからの最大火力ブッパ。これまで強敵を相手取る時に使用してきた自分の中での黄金コンボで終わらせようと聖術を使う。そして次いで攻撃系の聖術を────
「………ッ!なに!?」
結界に閉じ込められた人造賢者の奥、王城の中から飛んできた攻撃用の聖術をかろうじて避けながら奥に目をやる。
「なっ………!?」
そして私は、奥からつかつかと歩いてくるエルナの姿をした人間を目にし、人生で三度目となる自分の存在そのものを否定したくなるような後悔を味わいそうになる。いや、落ち着け。まだだ、まだそうと決まったわけじゃない。目の前の少女は見た目こそ完全にエルナであるが、その全身から感じる魔力はエルナのものとは少し違うように感じるし、何よりエルナは……あの子はそんな風に感情を完全に消し去ったような顔はしない。
そして私のその一瞬の、しかし確実に小さくない感情の揺らぎによって一瞬結界を維持するのを忘れた隙に結界から出た人造賢者は私から距離をとる。
「はあ……三号。何をしているの?あなたには消滅の許可が下りてないでしょう?王様の命令に逆らうなんて………」
「四号。助かった。命令違反をするつもりはなく、相手の戦力がこちらの想定をはるかに上回っていたため不覚を取った。共闘を要請する」
「まあ、構わないよ。もとよりそのつもりだったし」
どうやら今度は二人掛らしい。実に厄介ではあるのだが、それよりも今この場で一番重要なことを確認しておく。
「君は………エルナか?もしくは、エルナという人間を知っているかい?」
「エルナ……?誰だそいつは。私は人造特級計画四号・人造聖女一号だ」
エルナじゃない。目の前の少女は決してエルナではないのだ。名前が違うし、本人も否定している。魔力の感じや性格も全然違うし、他人の空似だろう。そうに違いないのだ。しかし厄介な状況だな、特級クラスの戦力が二人も出てきてしまった。エレインはまだ呆けている、というよりも現実に絶望している?まあ仕方ないだろう。大事な親友が変になってしまってる(推定)なのだ。私も平常ではいられないだろう。
姉さんは……お、どうやら回復したっぽいな。ひとまず二対二以上の状況には持っていけそうだ。そう思い姉さんに近づき、手短に情報共有兼作戦というにはあまりにも簡単すぎる作戦を伝える。
「姉さん、特級職が二人に増えた。片方の相手をしてくれれば私が一人ずつ確実に殺していける。どっちなら足止めできそう?」
「そうだね……じゃあ、賢者っぽい方任せてもいい?」
「もちろん」
そして私たち二人はそれぞれ走り出す。姉さんは自分に注意を向けるために、私は先ほど中断されてしまった黄金コンボをもう一度決めるために。片方を撃破してしまえばあとは二対一に持ち込める。そうなればひとまずこの場は勝ちだ。
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