第44話 人造賢者

 姉さんが王城に入って数秒後、姉さんが王城から出てきた。いや、出てきたというか、はじき出されたというか、轟音とともにバックステップを踏みながら出てきた。つまりそれほどの相手が立ちふさがっていたということであり、当然その相手も姉さんに追撃を加える。


 そして王城から出てきた敵の姿を見て


 「ニ、ニョーラ……」


 エレインちゃんが固まった。


 「ふむ、あれが……」


 賢者ニョーラ。私は面識がないけど、仲が良かったらしいエレインが言うのであれば間違いないのだろう。ガワはね。賢者ニョーラにはなんというか……私たちを見下しているというかまるでごみでも見るような眼というか。


 「性格悪そうだね、賢者ニョーラ」


 「ち、違います!あんな表情をする子では………」


 必死に否定しようとするエレイン。だがそれよりも早く推定賢者ニョーラが口を開く。


 「私はニョーラなどではない。人造特級計画三号・人造賢者二号だ」


 「自己紹介ありがと」


 変な単語がいろいろと出てきたぞ………人造賢者計画三号・人造賢者二号とかいう二番目なのか三番目なのかよくわからん名前だが、もしこの三号二号ちゃんがもう賢者ニョーラではなく、今までのすべての情報が正しく、それをつなぎ合わせれば王の行っていた人体実験とやらは人工的に特級職を生み出す実験?というか、特級計画三号なのに賢者二人目作ったの?圧倒的な賢者率だな……。単純に単体当たりの火力が高いから?それともある程度の素体がいるとか……?いや、賢者を素体に賢者を作ってるんじゃ意味ないか。


 「まあ、とりあえず迎撃を……」


 「ニョーラ!!生きてたんだね!?よかった……私心配してて……」


 「いやいや、多分違うと思うよ?なんかほら、人造がどうのって言ってるし」


 「え……?でも────」


 その瞬間頭上に巨大な魔法陣が展開される。やけに静かだと思っていたらこんなものを用意していたのか。姉さんは……被害の規模が相当なものになると予想したのか、市街地に被害が行かないように城を閉じ込める結界の強度を上げることに集中しているようだ………自分の防御を完全に捨てて。わが最愛の姉ながら本当にちょっと狂ってるんじゃないだろうかとは思うが、ひとまず動けない……というよりも動かない姉さんに近寄り結界を張る。


 『特級聖術・青生結界!』


 『流星メテオ



 巨大な魔方陣から流星が降り注ぐ。着弾とともに爆音が鳴り響くが、これが複数射出されてるのがたちが悪い。次々に着弾する流星を何とか防ぎ続ける。私は三人が入れる程度の大きさの結界を維持しているだけだが、姉さんの方はだいぶ苦しそうだ。


 「……ッ!」


 流星をすべて防ぎ切った後、先ほどまでの轟音と比べると余計に感じてしまう静寂の中結界を解除する。姉さんは……うん、ちょっとダウンしてるな。というか、あれだけの攻撃があって街に少しも被害が出てないのがすごい。


 「ニョーラ……?どうして………」


 「冷静になってエレイン。あれはもうニョーラじゃないでしょ。改造されてるっぽいし」


 「そんな……でも、あれは……」


 うーんダメっぽい。仕方ない、こうなったら私一人でもあいつの相手をしよう。エレインには悪いけどとりあえず最速であいつを倒すのが最善だろう。

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