第26話 顔合わせ
さて、勇者パーティーに入るために王城に来たわけだが……実に懐かしいな。昔を思い出してしまう。
まあいい。門番に聖女だと伝えて王城にさっさと入る。高級そうな刺繡の施された赤い絨毯をずかずかと踏み荒らしていくとひときわ大きな扉に行きつくので、そのまま扉を開け中に入る。
「……………あれ?」
扉を開け入ってきた私に視線が集まる。そしてその視線の主たちを私も認め、おそらく私と同じパーティーのメンバーになるだろう三人に視線を送ったのだが
「……勇者は?」
そこにいたのは前回の勇者パーティーで剣聖枠だった剣聖ブレンク、この前急に現れた賢者フォカプ、そしてこの中では一番面識がある
「やあ久しぶり、ルーズ。私は勇者パーティーとして選ばれたわけなのだけれど、もしかして実は間違いで君が今回の聖女枠だったりするかい?というか……勇者は?まだ来ていないのかい?」
するといつもすまし顔の、しかし今代の聖女の中ではひときわ信仰心が強い聖女は珍しくかすかに動揺しながら答える。
「はい。私も聖女として呼ばれたのは間違いないのですが……さすがに呼び間違いということはないでしょう。つまり、想定外ですが今回は聖女二人体制の可能性もあるでしょう」
そうこそこそ話をしていると、王様が口を開く。
「うむ、そろったな。そなたら四名が今回の魔王討伐パーティーである。敵はすでに四天王を三名失っているため道中の危険は歴代でも低いものになっているが、油断せぬよう励むといい」
しかしこれに質問を投げる聖女が一人いる。私ではない。ルーズだ。
「お待ちください王よ。此度のたびに勇者はおられないのですか?」
「ああ、勇者は先日失ってしまったためいない。しかし問題はなかろう。そなたらはこの国でも特に優秀な特級職たちだ。吉報を待っておるぞ」
そういうことじゃないだろう。なぜ勇者がいないのにパーティーを再編したのかと聞いているだろうに。この爺さんはわかってやってるのか?
「……とりあえず、外で…………話そう」
賢者フォカプがそう言ってきたので、一ミリも質問に答えられた気はしないがとりあえず私たち四人は外に出た。
「王様が、言うなら……仕方ない、として。……自己紹介…………賢者フォカプ」
なんだろうこの子。前に会ったときは人と話すのが苦手なのかと思っていたが、ここまで略すとなると人と話をすることが嫌いなのではないかとすら思えてくるのだが。まあ、意味は伝わるのでいいが。
「あ~、コホン。私は聖女のリリーだ。よろしく。バフとか得意だよ?」
私がフォカプの意思を汲んで軽く自己紹介をすると続々と自己紹介が始まる。まあ続々といってもあと二人なわけだけど。
「私は聖女ルーズフェルタです。主への信仰から凱旋天門を扱うことができます」
「俺は剣聖ブレンクだ。よろしく」
しまった、そういえばルーズもバフが得意なんだった。役割がかぶってしまう。……まあいいか。
「で、どうする?このまま本当に魔王討伐に向かうの?」
「…………そうするしか、ない。おうさまの、命令。」
私が問うとフォカプがそう返す。そう言えばこの子は魔王を倒したがっていたし、この子からすればありがたい状況なのか。
というか、この子が王にお願いしてこうなったとか言わないよな?さすがにない……よな?なんにせよ、説明が足りなすぎる。だが、こんなところで立ち話をしているだけでは何も変わらないし、仕方ないので、ああもう本当に仕方ないので、私たちは魔王討伐に出かけたのだった。
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