第25話 少女リリーの過去話 その6
さて、私たちは今プラナ村ということにいる。
結局あの後さっさと荷物をまとめて次の日には出発したのだ。
そこはもう、すごかった。武器屋が王都と比べると圧倒的に多いし、市場では店員らしき人たちが大声で客引きをしている。その圧力に気圧され思わず言葉が漏れた。
「なんというか……すごいですね。……煩雑?いや、混沌?」
「リリーちゃん、せめて活気があると言いましょう?」
そう師匠に注意される。思ってしまったんだから仕方ないじゃないかと思いながらもとりあえず訂正はしておく。
「じゃあまあ、さっさと冒険者になってひと眠りしましょう!明日から早速冒険者ですよ!!」
「え、リリーちゃん。せっかくこんなところまで来たのに観光したりしないのですか?」
そう、少し驚きながら聞いてくる師匠に向かって私はさも当然のことを聞かれたかのように、ため息交じりに答える。
「師匠……本気で私が町の観光とか好きなように見えるんですか?人込みとかとても嫌いなので師匠一人で行ってくださいよ…………いてっ」
叩かれた。
結局その後五時間ほど師匠の観光に付き合い、町には朝早めの時間に着いたはずなのに冒険者ギルドに訪れたのは昼過ぎになってしまった。まあ、師匠との観光は……そう!……悪くなかった。ので、まあかまわないけど。
そんなことを考えながら冒険者ギルドの扉をくぐる。するとその瞬間、先ほどまで建物の外まで聞こえてきていた騒ぎ声が半分程度まで落ちる。その変化に若干、いや結構入りにくさを感じながらも、師匠とともに受付まで歩いていく。
「あの、冒険者として活動したいんですけど……」
そう声をかけると受付の女の人が少し驚いたような顔になり、だがそれもすぐに笑顔に戻して慣れた様子で説明を始めた。
それぞれの役職には階級があるなどの当たり前のことからギルドでの依頼の受け方といった大切なことまで説明されたところで私たちの役職を聞かれる。
「私が上級神官で横の師匠が賢者です」
と言い一応賢者の証明書を師匠が見せると今度は明らかに動揺して、何なら悲鳴まで上げて証明書を5分ほどかけて何周も読み終わった後に先ほどとは比べ物にならないいい笑顔で「これからお願いします!!」と言われた。
ところで、ここは冒険者ギルドである。そして冒険者ギルドには色んな冒険者がいるわけだから、もちろん強い人と弱い人がいる。師匠は賢者なわけだから強い人は雰囲気で何かがわかるかもしれないが、弱い人からすれば私たちは女子供だ。……いや、女と美少女だ。
─────つまり。
「よう、嬢ちゃんたち。冒険に出たいなら俺らが連れて行ってやろうか?」
そう言って下卑た笑みを浮かべている……そう、ちょうど今しがた話しかけてきたような人たちに絡まれることもあるだろう。
まあ、この人達の目的が私たちに不利益を及ぼすのであれば……容赦する必要はないよね!
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